表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
71/97

第71話 闇に蠢く者たち ― 世界を呑む陰謀 ―

◆密やかな会談

婚約発表を終えたゼルマールの城奥。

豪奢な装飾に囲まれた一室で、重苦しい密談が始まっていた

集まったのはゼルマール国王とその王子、そして――裏で操っている「あの人」。

傍らには、忠実な使い人の影も控えている。

国王が口火を切った。

「これで舞台は完成した。あとは予定通り、演じるだけだ」

王子もまた、不敵な笑みを浮かべる。

「連合国の奴らも、まさか本当に我らと手を組むとはな。終わったら、あいつらも用済みだ。潰すのは容易い。全ては我々の手中にある……そのために、ミリアを派遣した。あれが味方だと信じ込ませるには十分だろう」

使い人は恭しく頭を垂れた。

「全ては貴方がたのために」

ただ一人、“あの人”だけが沈黙を保ったまま、誰とも視線を合わせようとしなかった。


◆国王の忠告

それでも国王は続ける。

「相手の戦力は高が知れている。蓮とグラン――だが、その程度なら剣聖の末裔とミリアで十分に対処できる。我々には勇者パーティーも付いているし、軍事力も他国とは桁違いだ」

一度、言葉を区切り、その瞳を鋭く光らせた。

「だが、傲慢は敗北の始まりだ。慢心するな。必ず入念な作戦を立てろ。些細な綻びが全てを崩す。油断するな」

重々しい声音に、一同は深く頷き、会談は静かに幕を閉じる。


◆残された影

やがて国王と王子が去り、部屋に残ったのは“あの人”と使い人だけとなった。

重苦しい沈黙の中、“あの人”がふっと笑みを浮かべる。

「――なんと惨めな人間たちだ。自らを勝者と信じて疑わぬその姿こそ、哀れだ」

その声は冷たく、狂気を孕んでいた。

「全てが終わった暁には、連合国も、ゼルマールも、魔族も、勇者さえも……すべてを終わらせてやる。この世界を、俺だけの理想郷へ作り変える」

使い人は狂信的な笑みを浮かべて応じる。

「もちろんです。“あのお方”こそ真の王。ミリアにも、今は役者を演じてもらってますから」

二人の影が黒い霧のように広がり、部屋を満たしていく。

その不穏な気配は、やがて世界の隅々にまで静かに染み渡っていった――


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ