第63話 真実の告白 ― 受け入れられた真実―
◆戦後の謁見と真実
翌日。
グラン一行は国王ノアの呼び出しを受け、王城の謁見室を訪れた。
厳かな空気の中、国王と王女クレアが玉座に並んでいた。
「まずは……この国を守ってくれたこと、心から感謝する」
ノア国王は深々と頭を下げた。だが次に顔を上げたとき、その瞳には真剣な光が宿っていた。
「しかし――昨日の戦いで見た“あの姿”。セレナ殿の変化、そして突然現れた魔族たち……そのすべてを説明してほしい」
場は凍りついた。
だが、グランは逃げず、真っ直ぐに国王とクレアを見据えた。
「……もう隠すことはできません。俺は――二千年前に討伐された“魔王グラディオン”の転生者です。セレナはヴァンパイア族、ナツは悪魔の末裔、フェンリルは古の聖獣。そして蓮は、かつて俺を討った一員で、地球から来た転生者です」
衝撃に、国王もクレアも目を見開いた。
「そ、そんな……!」
クレアの声は震えていた。だが、彼女は唇を噛みながらも小さく呟く。
「でも……グランさんは、グランさんです。国を救ってくれた英雄であることは、変わりません」
その言葉に、国王も静かに頷いた。
「……過去がどうであれ、今この国を救ったのはお前たちだ。ならば我らは、その“真実”を受け入れよう」
グランは安堵の笑みを浮かべ、肩の力を抜いた。
「今はただの人間です。……もし魔王としての力が覚醒する時が来たら、その時は――改めて、よろしくお願いします」
国王とクレアは、しっかりと頷き返した。
◆家族への告白
その後、グランは仲間たちと共に自宅へ戻った。
リオとレナ――両親は、すでに異変に気づいていた。
「グラン……あれは、セレナちゃんだったの?」
母リオが静かに問いかける。
グランは迷わず頷いた。
「うん。セレナはヴァンパイア。ナツは悪魔、フェンリルは聖獣。そして俺は……二千年前に討伐された魔王の転生者なんだ」
沈黙が流れる。
だが父レンが、低く力強い声で言った。
「……それでも、セレナちゃんは皆を守るために力を振るったんだな?」
「……はい。自分の正体をさらけ出してでも、この国を守ろうとしました」
母リオは目元を拭い、微笑んだ。
「……確かに怖いと思った。でも、グランの心は変わってなかった。むしろ、強くなって皆を守るようになった。……そんな息子を誇りに思うわ」
父レンも頷き、言葉を添えた。
「魔王だろうが何だろうが……お前が俺たちの息子であることに変わりはない」
「……ありがとう……俺、本当に……あなたたちの子供でよかった」
涙を流しながらグランは言い、母リオに抱きしめられた。
◆祝勝の宴
その夜。
家では、久しぶりに一家揃っての食卓が囲まれた。
「今日はちょっと豪華にするわね」
母リオが腕を振るい、グランのレシピ通りに味噌汁に煮物、天ぷらに炊き立てのご飯……温かい香りが家中に広がる。
「うまっ! これ、最高!」
「セレナ、おかわりある?」
「ナツ、ちょっと食べすぎだよ!」
賑やかな笑い声が響き、戦いの疲れが少しずつ溶けていく。
束の間の平和の中で、彼らは改めて“家族”であることを実感していた。
その夜、小さな祝勝会の灯火は、確かに彼らの絆をさらに深く結びつけたのだった。




