表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
62/95

第62話 戦乱の幕開け ― 絆と逆転の一撃 ―

◆戦場の狂乱

燃え盛る戦場。怒号と悲鳴、そして魔物の咆哮が交錯し、地獄絵図のような光景が広がっていた。

ヴァンパイアクイーンと化したセレナは、長く艶やかな黒髪を風に靡かせ、漆黒の翼を大きく広げる。冷ややかな視線と共に振るわれる魔力は、瞬く間に数十体の魔物を氷の棺へと封じていった。

「……ごめんね、グラン。私は……また、化け物に戻っちゃった。でも……この国は、あなたの大切な場所。だから――守らなきゃ」

その隣では、ナツが悪魔の本性を解放していた。紅い角、黒い羽根、燃え上がる魔力の尾。悪魔の力が奔流となって魔物を焼き尽くす。

「……こんな姿、できれば見せたくなかった。でもセレナが前に進んだんだ。私も――戦うよ、仲間として!」

こはるもまた、セレナの覚悟を受け止め、剣を握る手に力を込めた。

「……あたしは獣人。昔は奴隷だった。でも、今は違う。グランの仲間だから。守るよ、この場所と、家族を!」

三人は互いに声を掛け合いながら連携し、次々と魔物を撃破していく。

だが――それでも数千という圧倒的な数の前に、限界は近づいていた。


◆絶望と希望

避難所近くにまで迫る魔物の波。その最前線には、グランの両親の姿があった。

「リオさん、あれを見て……! あの黒い翼の……」

「……セレナちゃん。あなた……どうして、こんな……」

母レナの声は震えていた。だがセレナはその視線をまっすぐ受け止め、涙をこらえて叫ぶ。

「ごめんなさい。でも、私は……あなたたちを守るために、戦ってるの!」

その時――空気が震えた。

空に巨大な魔法陣が広がり、重力が一気に変化する。圧倒的な力で数百の魔物が地に伏せた。

「――戻ったぞ、皆!」

グランの声と共に、フェンリルと蓮の姿が戦場に現れる。

グランが空中から手を翳すと、重力魔法が発動し、魔物の群れを圧死させた。

そこへ、さらに白銀の巨影が天より舞い降りる。

「ギィイイイイイイッ!」

白い竜が放つ聖なるブレスが大地を駆け抜け、魔物を焼き尽くす。

続いて、黒き霧の中から無数のレイスが出現。

「……我らが主より命を受けた。この地を、守る」

怨霊の群れが魔物へと突撃し、魔力を吸い取りながら消し去っていく。

さらに空では妖精たちが風に乗り、魔物たちの感覚を撹乱。敵を同士討ちへと導き、戦場は混乱に包まれた。

最後に姿を現したのは、魔族の代表――ユエ。

「さあ、最後の力を貸してあげるわ。――これで、皆を守りなさい!」

ユエが三人に向かって強化魔法を放つと、その身体は輝きに包まれた。

「ユエ、来てくれたんだ……!」

「これが……仲間……」

「今なら、負ける気がしないね!」

ナツ、セレナ、こはる――三人は歓声を上げ、戦意を新たにする。

戦局は一気に逆転した。

そして――魔物の群れは完全に壊滅した。

国を覆っていた暗雲が晴れ、静寂が訪れた時、魔族たちは何も言わず姿を消していった。


◆戦後の語らい

その夜。

戦いを終えたグランたちは、公園のベンチに腰を下ろし、疲労の色をにじませながらも静かに安堵の息をついていた。

「なあ、蓮……そろそろ聞かせてくれないか。君の過去のこと。全部とは言わないけど……どんな想いでここに来たのか」

しばし沈黙したのち、蓮はぽつりと語り始めた。

「……俺は、高校生の時にこっちに来た。大切な人と、“ひかり”って子と一緒にいたんだ。でも……守れなかった。異世界の力を目覚めさせた代わりに、彼女のもとから消えてしまった。ずっと……後悔してた」

拳を震わせる蓮。

「それからずっと帰還方法を探してた。でも見つからない。あの人に“知っている”って言われて協力して……けど、裏切られた」

グランは微笑み、立ち上がる。

「……なら、俺たちも一緒に探そう。帰還方法。な、皆?」

セレナも、こはるも、ナツも強く頷いた。

「……それに、幸いにも俺は――蓮がかけられていた転生魔法の魔法陣の形を知ってる」

「……えっ?」

蓮の瞳が大きく見開かれる。

「使ったことはないし、詠唱も知らない。けど……知ってるだけでも、一歩進んだろ?」

やわらかな夜の光に照らされ、蓮の頬にかすかな笑みが戻った。

「……もしかしたら、また会えるね。ひかりに」

グランの言葉に、蓮は静かに微笑んだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ