第56話 転生魔法の探求 ― 禁忌の希望 ―
◆失われた古代魔法
転生魔法――。
それは、はるか昔に存在した失われた古代魔法のひとつである。
竜族が持つ「転生の血脈」による魔法とは異なり、これは人の手によって編み出された、本来ならば触れてはならない領域の魔術だった。
術者の命、そして多数の命を代償として成立するその術式は、あまりにも危険すぎた。
世界の均衡を崩すほどの力――。
ゆえに二千年前、大賢者セレフィアの手によって完全に封印され、歴史から抹消されたのである
第56話 転生魔法の探求 9
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◆拒絶の言葉
それでも蓮は、地球への帰還をあきらめてはいなかった。
一縷の望みを抱き、大賢者セレフィア本人にかつての術式について尋ねる。
返ってきたのは、静かにしかし強い拒絶だった。
「――その魔法は、世界を歪めます。たとえあなたの願いが純粋であっても、触れてはなりません」
淡々とした言葉の中に、深い決意と恐れが滲んでいた。
それは単なる拒絶ではない。知っているからこそ、守ろうとする者の声だった。
蓮は拳を握りしめ、夜空を仰ぐ。
(……やはり、帰る方法はないのか)
胸の奥で諦めの色が濃くなりかける。
だが、それでも――。
◆かすかな可能性
蓮の脳裏に、グランと竜族の姿がよぎる。
(竜族の“転生魔法”は別系統の術だ……けれど、何か共通点があるかもしれない)
完全に閉ざされた扉ではない。
もしかすれば、違う形で“帰還”への道を開けるのではないか――。
その小さな希望が、彼を再び立ち上がらせた。
◆闇への報告
やがて蓮は、“あの人”に通信を繋ぐ。
淡い魔法陣が灯り、闇の中から冷たい気配が滲み出る。
『今、彼らの実力を確認する機会を得ました。これは貴重なチャンスです』
蓮の声は淡々としていた。
しかしその奥には、焦燥と執念が渦巻いていた。
――帰還という希望を、もう一度手繰り寄せるために。
そして、真実の“転生魔法”に迫るために。
蓮は禁忌へと足を踏み入れる覚悟を固めていた。




