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第53話 イーストランド案内 ― 創造主の孤独 ―

◆街の光景

転移魔法によって一瞬で降り立ったその地――。

そこは整然とした街並みと、活気ある人々の声に包まれた国。

「ようこそ、俺の国へ」

蓮が両手を広げると、仲間たちは目を輝かせながら辺りを見渡す。

石畳の道は美しく清掃され、木造と石造りが融合した建物が整然と並ぶ。

市場には笑顔あふれる人々が集まり、子どもたちの声が路地に響いていた。

街角に立つ銅像を見つけ、こはるが笑う。

「……なんか、蓮に似てるね?」

「ま、気にしないで。勝手に建てられたんだ。止めたんだけど、感謝の証らしいよ」

照れくさそうに肩をすくめる蓮。その姿に、自然と場の空気も和らいだ。


◆蓮の思想

案内の途中、蓮は立ち止まり、皆へと振り返る。

「この国はね、俺の故郷――“日本”を参考にして作ったんだ。

リーダーは民衆が選ぶ。問題もあるけど、誰かの独裁にはならないように、仕組みで回るようにした」

「民が選ぶ……か。それも、ありなのかもしれないな」

グランが感心したように頷く。

「まあ、不満が出ることもあるけどさ。少なくとも、皆が“自分たちの国”だって意識して動いてくれてる。……それが、この国の強さでもあるんだ」


◆王との再会

やがて一行は城へ辿り着いた。

「え、いきなり王様に会えるの?」

セレナが驚くと、蓮は笑って答える。

「大丈夫。俺が言えば通してくれるから」

その言葉どおり、城の扉はすぐに開かれ、一行は謁見の間へと案内された。

現王は蓮の姿を認めるなり膝をつき、深く頭を垂れる。

「蓮様……まさか再びこの地に戻られるとは……」

「ちょ、やめてよ。俺はもうただの旅人なんだから」

「いえ、貴方はこの国の“創造主”。民のために戦った方に礼を尽くすのは当然のことです」

王の真摯な言葉に、蓮は少し困ったように笑い、頭を掻いた。


◆宴の裏で

その日の夕方、歓迎の宴が城で開かれた。

各地の代表が集まり、食事や音楽、踊りが華やかに広がる。

セレナとこはるが手を取り合って舞う姿に、グランも自然と笑みを浮かべた。

だが――賑やかな場を抜け、蓮はひとり城の地下へと降りていく。

そこには彼専用の私室と、壁一面を覆う魔導書棚があった。

机に向かい、分厚い書をめくり続ける。

探し求めているのはただ一つ――「転生魔法」。

「帰還の術がないなら、自分で作ればいい……そう思ってた。でも……」

指先が震える。

「……何がチート級の能力だよ。万能なら、今頃こんなところで足掻いてないさ……」

ランプの灯りに揺れる影の中で、蓮の表情は誰にも見せないほど沈んでいた。

誰にも語れぬ焦燥と孤独――それだけが、彼の胸を静かに締めつけていた。


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