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第49話 帰還と新たな影

◆帰還の温もり

「ただいま」

久しぶりの我が家。その一言を口にしたグランを、両親――リオとレンが笑顔で迎えた。

「おかえり、グラン。無事でよかったねぇ」

「まあ、ちゃんと立って帰ってこれたなら合格だな」

懐かしく、そして温かな時間が流れる。

こはるはグランの両親に深く頭を下げ、丁寧に挨拶を済ませた後、「今日は一度、自宅に戻ります」と告げて帰っていった。

半年の間、魔王国で共に過ごした仲間とは、しばしの別れである。


◆王宮での報告

翌日。

グランは一人で王都へ向かい、国王ノアへの報告のために王宮へと足を踏み入れた。

そこで出迎えたのは、思いがけぬ人物だった。

「帰ってきましたのね……」

柔らかな声と共に現れたのは王女クレア。

彼女は駆け寄ると、目元に涙を浮かべてグランを見上げた。

「お会いしたかったです……おかえりなさい。帰ってきて、よかった……」

その瞳には、待ち続けた者の切なさと、安堵が滲んでいた。

「国王に会いたいのですが……」

グランの言葉に、クレアはすぐに頷き、侍女へ手配を命じる。

ほどなくして案内された応接間で、国王ノアが入室した。


◆国王との対話

「まずは、よく帰ったな。……ところで、先に諜報部からの報告がある」

国王の言葉に続き、控えていた諜報担当者が進み出る。

「“あの人”について、いまだ明確な情報は得られておりません。ですが、最近“剣聖国”近辺で魔物の数が不自然なほど減っているとの報告が入りました。

また、連合国と剣聖国の間で何らかの協定が結ばれたという噂があります。……いずれも確証はなく、因果関係は不明です」

グランは小さく頷いた。

「……気をつけた方が良さそうですね」

そして今度は、彼自身の報告の番だった。

「強い魔力の影響で土地は荒れており、魔物も多く、生活には不便でした。

ですが、その分、己を鍛えるには良い環境だったと言えます。

それぞれが個別に特訓を重ね、半年間を過ごしました」

“魔族”という存在には一切触れず、言葉を選びながらの報告だった。

ノア国王は黙って聞いていたが、やがて重く口を開いた。

「……君は、どこまで見えているのだろうな」

その問いに、グランは答えず、ただ微笑みを返した。


◆新たな歩み

報告を終え、王宮を後にしたグランは、その足で冒険者ギルドを訪れた。

久しぶりのギルドの空気を吸い込み、高額な依頼を一件受ける。

再び向かうのは、変わらぬ我が家――。

だが心の奥には、新たな決意と、世界の変化への警戒が確かに芽生えていた。


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