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第45話 努力の剣士と四天王の誇り

◆こはると蓮、剣の特訓

特訓が始まって数日後。

こはると蓮は集落の広場の一角で木剣を手に、向かい合っていた。

「君って、剣聖の血が流れてるかもしれないって話だったな?」

蓮が軽く肩を回しながら問いかける。

「はい。確証はありませんが、グラン様からも、そうかもしれないと……」

こはるは少し戸惑いながらも素直に答えた。

蓮はふっと笑みを浮かべる。

「なら素質はあるな。あの時代の剣聖の剣技は独特だったけど、基礎は変わらないはずだ。……まずは素振りからだ」

そこから始まったのは、ひたすらに地道な基礎練習だった。

こはるは黙々と素振りを繰り返し、蓮はその姿を根気強く見守り、時折的確なアドバイスを投げかけた。

数日後、模擬戦が始まる。

「いくぞ、こはる。気を抜くなよ」

「はい、お願いします!」

だが結果は――瞬殺。

蓮の繰り出した一撃に、こはるは反応すらできず膝をついた。

「……やっぱり、血筋だけじゃ通用しないか」

蓮は眉をひそめたが、同時に違和感を覚える。

(……あれ? こはるには剣聖特有の“加護”がない)

「……こはる。お前、加護がないんじゃないか?」

「えっ……加護……ないんですか……」

ショックを受けた表情を見せたこはる。だが、すぐに立ち上がり木剣を握り直した。

「なら、もっと努力するだけです。もう一本、お願いします!」

その瞳は揺らがず、強い光を宿していた。

蓮は驚き、やがて笑みを浮かべる。

「いい根性してる。……楽しみだな、“努力で強くなる剣聖”ってのも」

それからの彼女の成長は目覚ましかった。

加護こそなかったが、努力と鍛錬で身につけた剣技は磨かれ、やがて蓮にすら「まるで加護があるみたいだ」と言わしめるほどのものになっていった。


◆フェンリルと魔物の戦場

一方その頃、フェンリルは森の奥で、蓮が召喚した魔物と死闘を繰り返していた。

相手は今のフェンリルよりもやや強いとされる凶悪な魔物たち。牙を剥き、魔力を纏い、容赦なく襲い掛かってくる。

「……ちっ、手加減なしってか。面白いじゃねぇか」

フェンリルは低く唸りながらも冷静に距離を測り、風を纏った牙で反撃する。

もともと彼は群れで連携して戦うことを得意とする聖獣であり、単独での戦いは不得手だった。だが――。

「俺は、元・魔王四天王だ……なめんなよッ!」

牙と爪に炎と風を纏わせ、時に魔法を絡めた戦法で魔物を打ち倒す。

その動きは、もはや“魔法剣士”のようであり、かつて以上の鋭さを増していた。

戦いを重ねるごとに、本来の力を取り戻し、さらに超えていく。

そして――。

「もふっ……! この毛並み、強さに比例してもふ度が上がるとは……!」

ナツが無邪気に抱きつき、極上の毛並みに顔を埋める。

フェンリルは照れくさそうにしながらも、その尻尾を嬉しげに揺らしていた。

「グラン……もうすぐ、俺はあの時よりも、もっとお前を支えられるぞ」

星空の下、フェンリルは静かに誓いを立てた。


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