表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
41/95

第41話 魔族代表会議

◆集会の幕開け

魔族の集落の中心――古びた会議殿に、五つの種族の代表者が集まった。

壇上に立つのは、ユエの案内で来たグラン。

その姿を前に、各代表は静かに、しかし鋭い眼差しで彼を見据えていた。

――デーモンロードのユエ。

――ピクシーの長、メイ。

――白龍族の長、シス。

――ヴァンパイアロードのヴィレ。

――レイスの長、ミカ。

彼らは二千年を超えて存続し、魔族の尊厳を守り続けてきた者たちだった。


◆現状の共有

まず口を開いたのはユエだった。

「今、我々魔族はどうにか生活を繋いでいます。悪魔たちは人間の貴族と契約を結び、魔力を提供する代わりに食料や情報を得ています。

竜族は狩りをして他種族に肉を分け与え、妖精たちは自然魔法を駆使してわずかな土地を耕しているのです」

続いて、ヴァンパイアの長ヴィレが重く言葉を重ねた。

「ヴァンパイアも同じ。血は足りないけれど、互いに支え合うしかない。……それでも私は信じていたわ。大賢者の言葉を。“彼”がいつか戻ると」

会議殿にざわめきが走る。

グランは黙したまま、その声を聞いていた。


◆竜族の問い

静寂を破ったのは、白龍族の長シスだった。

「……お前の“竜族”としての力はどうした、グラン。俺と対を成す“黒龍”の力が、今はほとんど感じられない」

その鋭い問いに、場の空気が一気に張りつめる。

「竜族は寿命が尽きる前に“輪廻転生”をかけ、竜として復活する。それがお前は――人間に転生しただと? そんな不完全な転生……どうかしてる」

さらに、レイスの長ミカも重ねる。

「人間に転生した魔王に、私たちは本当に仕えるべきか? あの戦争で受けた人間からの憎しみ……忘れられるものではない」

会場の空気は張り裂けんばかりの緊張に包まれた。


◆擁護と信頼

だがユエとメイが同時に立ち上がる。

「私たちは知っている。グラン様が魔王として、魔族のために尽くしてくださったことを。姿が変わろうと、本質は変わらないはずです」

「そうよ。魔王様は魔王様。帰ってきてくれただけで、私たちには希望がある」

毅然とした言葉に、会場は一瞬の静けさを取り戻す。


◆グランの答え

視線が集まる中、グランは静かに立ち上がった。

「……俺は今、人間として生きている。けれど、魔王だったことを忘れたことは一度もない」

「人間に転生して分かった。奴らは人間同士ですら差別や搾取を繰り返していた。醜いと思った。だが……セレナやナツ、こはる、クレア、ノア国王。そこには確かに“光”もあった」

「だから俺が目指すべきは、魔族だけを導くことじゃない。人間も魔族も、すべてが共に生きられる世界だ」

「……それでも、俺はまだ迷ってる。世界を知らなすぎる。だからもう少し旅をさせてほしい。……その先で、本当に作りたい世界を見つけた時、改めて力を貸してくれ」

そう告げると、彼は膝をつき、深々と頭を下げた。

会場は静まり返り、代表者たちはしばし言葉を失った。


◆再び魔王として

やがて、シスが低く笑い声を上げた。

「……竜族の力は消えても、お前の本質は変わらねぇな。やっぱりグランはグランだ」

ミカも苦笑する。

「相変わらず人頼りね……魔王なのに」

ユエ、メイ、ヴィレが揃って頷き、宣言する。

「我らは、グラン様を再び“魔王”として迎えます」

その言葉に、会場は静かな熱気に包まれた。

二千年の時を越え、魔族は再び一人の“王”を戴いたのだ。


◆竜族との語らい

会議後、白龍のシスが肩を叩いてきた。

「よう、おかえり。グラン」

「あぁ。ただいま。……やっぱり力、落ちてるか?」

「半分以上な。でもな、2000年経った今、こうして酒を酌み交わせるとは思わなかった。

さっきはきつく言ったが、代表って立場もあるしな。……けど、お前と俺は“別格”の竜族だろ?」

「……あぁ。生きててくれて、ありがとう。シス」

二人は杯を交わし、朝まで語り合った。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ