表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
40/95

第40話 魔族集落と大賢者

◆集落への到着

グラン一行は荒廃した大地を歩き続け、ようやく小さな集落へと辿り着いた。

そこは今もなお魔族たちが暮らしている場所だった。

彼らの姿は人間とは大きく異なるものの、その振る舞いには確かな尊厳があった。

ユエが一行を先導し、集落の奥へと進むたび、周囲の魔族は一目見るなりひざまずき、無言で敬意を示す。

「お待ちしておりました、魔王様」

かすかな声に、グランは目を細めた。

二千年の時を越えてなお、自分を“魔王”と呼ぶ存在が残っている――その事実は、彼の胸を重く揺さぶった。

「……案内を頼む」

短く返すと、ユエは静かに頷き、さらに奥へと進んだ。


◆大賢者との邂逅

数時間の歩行を経て、集落の最深部に辿り着いた。

そこには――肉体を失い、骨だけとなった大賢者が静かに座していた。

骨の周囲には強力な結界が張られ、なおも威厳と存在感を放っている。

「……大賢者か」

グランは立ち止まり、その異様な姿を凝視した。

二千年前、確かにこの存在は自らの国を滅ぼした“敵”でもあった。

だが同時に、その叡智と力は誰よりも尊敬に値するものだった。

ユエが進み出て、恭しく頭を下げる。

「お待たせしました。こちらが魔王様です」

その言葉に呼応するように、骨の間から古びた声が響いた。

「……魔王よ、来たか」

グランは深く頭を垂れる。

「礼を言う。あなたの導きがあったからこそ、ここに来ることができた」

結界が微かに震え、大賢者の意志が伝わってくる。

「魔王よ。お前が成すべきことはまだまだだ。お前の言葉通り、この世は腐っている。

だが、その世界を変えるのは――他の誰でもない、お前自身だ。

気をつけろ。この世界は必ずお前を試す。選んだ道の先には、必ず試練が待つ」

骨の姿はわずかに崩れかけるが、グランは即座に新たな結界を展開し、その姿を保たせた。

やがて、大賢者は右手を掲げ、魔導書を差し出す。

「これを持っていけ。古代魔法の一つ、“空間操作”だ。お前が進む道で、必ず必要になる」

「……必ず活かそう」

グランは魔導書を受け取り、重みを確かめるように握りしめた。

その瞬間、結界は音もなく消え、大賢者の姿もまた静かに霧散していった。


◆残された言葉

静寂の中、ユエがグランの隣で微笑む。

「魔王様、あなたの未来は決して暗くはありません。ですが、そこに至るまでには数多の困難が待つでしょう。

……それを、私は見届けたいのです」

「……ああ。必ず乗り越える」

短く答えたグランは魔導書を懐に収め、再び歩き出した。

魔族の集落では、代表者たちとの会話が待っている。

その眼差しの先には――二千年前から続く因縁の地で、新たに紡がれる未来があった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ