表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
39/95

第39話 魔王国突入前の決意

◆決意の言葉

元魔王国を目前に、空気は張り詰めていた。

禍々しい魔力が風に混じり、視界の奥に見える灰色の空が一行を睨みつけているようだった。

仲間を前に、グランは深く息を吸い、静かに口を開いた。

「……ここから先は、俺の過去そのものだ。

だけど、まだ答えは出せてない。二千年前、俺はこの地で終わった。だが今、再び歩いている。

少しずつ……未来を見据えたいと思っているんだ。

この世界がどうあるべきか、俺が何をすべきか――それを見極めるためにも、もう少し世界を見て回りたい。

……だから、これからも傍にいてくれないか?」

数秒の沈黙ののち、仲間たちが次々と応える。

「……私は最初から、あなたと共に歩むと決めています。これからどんな未来になっても、それは変わりません。だから、安心して」

セレナは一歩前に出て、揺るぎない瞳で微笑んだ。

「うんっ……グランと一緒に行く。私、まだまだ弱いけど……隣にいたいから!」

こはるは拳をきゅっと握り、頬を赤らめながらも力強く答えた。

「お前の隣にいるって決めたのは、俺自身だ。あの過去も、これからの道も、全部ついていってやるよ」

フェンリルは尻尾を揺らしながら低く唸り、力強く誓う。

「オレも行くー! グランといると、毎日が冒険なんだもん!」

ナツは元気よく手を上げた。

「俺に選択肢なんてないよ。君と旅してると、退屈しない。……このまま、世界の果てまで行こうぜ」

蓮は苦笑を浮かべながらも、真剣な瞳で言った。

その全てを受け止め、グランは静かに頷くと、結界の前に立った。


◆封印を超えて

「……行こう」

指先で印を描くと、濃密な魔力が震え、結界がゆっくりと解かれていく。

背後からSランク冒険者の剣士が言葉を投げかけた。

「ここまでだ。俺たちは外で待機する。……中のことは頼んだ。気をつけてくれ」

「ありがとう。ここからは、俺たちの役目だ」

返答と共に、グランたちは枯れ果てた大地へと足を踏み入れた。

そこは色彩を失った世界。禍々しい魔力が空気を濁し、植物はなく、石と骨が風にさらされている。

空は灰色に曇り、陽光すら届かない荒廃の地だった。


◆ユエとの再会

やがて、一人の女性が静かに立っていた。

和装に身を包み、月のように白い肌を持つ儚げな存在――ユエ。

「――お待ちしておりました、主さま」

柔らかな声に、仲間たちは足を止める。

「ここから魔族の居住地へご案内いたします。……ですが、その前に――」

言葉を遮るように、こはるがふらりと立ち止まり、膝をついた。

「だめ……気持ち悪い……頭が、ぐらぐらする……」

グランが駆け寄ると、こはるの額には冷や汗が浮かんでいた。

この地に充満する濃厚すぎる魔力が、彼女の身体を蝕んでいたのだ。

「私が結界を……!」

セレナがすぐに魔力を展開し、こはるの周囲を柔らかな膜で包む。

「これで少しは楽になるはず。グラン、ここで一度休みましょう」

「……ああ、そうしよう」

ユエは頷き、近くの岩陰に皆を案内した。


◆刻まれた過去

グランはふと遠くを見つめた。

そこには石に刻まれた無数の傷跡――二千年前の戦いの痕跡が残っていた。

あの時、自分が選んだ“終わり”が、今も確かにここにある。

果たしてあの戦いは、何を変えたのか。

それとも、何も変えなかったのか――。

彼の胸に、かつて抱いた“後悔”の影がじわりと滲んでいた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ