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第38話 再び魔王の地へ

◆許可と条件

グランは国王ノアに、元魔王国への進入許可を申請した。

その結果、条件として提示されたのは――「この国でも随一の冒険者パーティーを同行させること」。

「……俺たちだけではなく、案内人をつけろというわけか」

グランは短く呟き、その決定を受け入れた。

間もなく合流したのは、四人編成の冒険者パーティー。

剣士、魔法使い、タンク、そして聖女。いずれもSランクの実力を持ち、バランスに優れた布陣だった。


◆道中の語らい

行軍の途中、グランは彼らに元魔王国について尋ねた。

「中の様子はどうだった?」

剣士が渋い顔で答える。

「入って少し探索したが、魔族には会わなかった。だが土地は枯れ果て、川も干上がっていた。

魔力が濃すぎて、まともに生命が生きられる環境じゃない」

魔法使いもまた頷く。

「魔力は強大だが、歪んでいる印象だったわ。あそこはもう……生者の地じゃない」

その言葉に、グランは表情を曇らせた。

(――あの地は、かつて俺が治めていた国。だが今はただの“滅びの地”。

俺はそこで、何を見て、何をすべきなのだ……)

心に重苦しい葛藤を抱きながら、彼は歩を進めた。


◆仲間たちの思い

そんな彼の横で、セレナとこはるは無言のまま寄り添っていた。

言葉にせずとも、彼の迷いと苦悩を感じ取っていたのだ。

一方、ナツは蓮と並び、人間という種族について質問を繰り返していた。

蓮は淡々と、しかし丁寧に答えていく。

「人間は弱いけど、その分だけ工夫する。だから、どんな場所でも生き延びられる」

「……不思議ですね。弱いのに、滅びない」

「そう。不思議だからこそ、俺も惹かれたんだ」

二人の会話は穏やかだったが、その一方でフェンリルはグランの膝に座り、じっと蓮を監視していた。

敵意とまではいかない。だが信頼とも呼べぬ眼差し。静かな緊張感だけがそこに漂っていた。


◆封印の地へ

やがて――。

一行はついに、“元魔王国”を覆う結界の境界線へと辿り着いた。

そこは重苦しいほどに濃い魔力が渦巻き、空気そのものが歪んでいるかのようだった。

「……ここが、かつて俺が治めた地か」

グランの声は低く、静かだった。

仲間たちは誰も口を開かず、ただその背を見守っていた。

封印の地を前に、彼らの旅路は新たな段階へと踏み出そうとしていた。


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