第37話 仲間と決意、そして旅立ちへ
◆蓮の加入
自宅での蓮との語らいを終えたその日の午後。
グランは仲間たち――セレナ、こはる、フェンリル、ナツを呼び集めた。
グランは一呼吸置き、真剣な表情で告げる。
「……蓮が仲間に加わることになった」
その言葉に場の空気が張り詰める。
特にフェンリルの瞳が大きく揺れた。
「……正気か、グラン?」
低く唸るような声。あのフェンリルがここまで感情を露わにするのは稀だった。
「こいつは……俺の仲間たちを、群れを、無残に殺したんだぞ。俺が生き残ったのは、あいつらが盾になってくれたからだ。あの時の絶望、忘れたわけじゃない……!」
声は怒りと苦しみに震え、鋭い牙を剥き出す。
しかし蓮は逃げず、真正面からその瞳を受け止めた。
「……あの時の俺は、力を持て余したまま戦っていた。君たちの群れを“戦場の敵”としか見ていなかった。
だけど旅をして、世界を見て……あの戦いに意味があったのか、自分自身に問い続けてきた。
俺は、もう一度やり直したいんだ。贖罪でも、信頼でもいい。今度は共に戦いたい」
静かな声だったが、その響きは重く真摯だった。
フェンリルは長い沈黙の末、視線を伏せ、低く答えた。
「納得なんて……できるわけねぇ。だが……グランが選んだ道なら、俺は信じる。
ただし、いつでも牙は剥けると思っておけ。――それが、生き残った俺の誇りだ」
それは、フェンリルなりの“許し”であり、誓いでもあった。
セレナも、こはるも、クレアも、そのやり取りを静かに見届け、小さく頷いた。
こうして――パーティーは六人となった。
グラン(転生した元魔王)
セレナ(吸血鬼の少女、ヴァンパイアクイーン)
こはる(獣人の少女、剣聖の血を継ぐ)
フェンリル(忠義深き聖獣)
ナツ(ユエの息子であり、幼き魔物)
蓮(異世界から来た転生者)
◆旅立ちの決意
その後まもなく、王宮から正式に「元魔王国への調査・進入」の許可が下りた。
それは同時に、危険極まりない長期遠征の始まりを意味していた。
グランは両親――父レンと母リオに、これからの旅立ちを告げた。
「行くのね、グラン……」
リオは寂しげに目を細め、息子を見つめる。
「気をつけてな。お前の道はお前のもんだ。だが……仲間を信じて進め」
レンは背を押すように笑い、力強く肩を叩いた。
その言葉に、グランは深く頷いた。
◆封印の地へ
こうして一行は、新たな目的地――封印された“元魔王国”へと旅立つ。
それは失われた歴史を知る旅であり、かつての仲間との因縁を越え、
そして世界の真実へと至る旅路。
夕陽に照らされる街道を、五人と一匹の影が長く伸びていった。




