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第35話 帰還と宴の夜

魔物襲撃を退けたのち、戦場に静寂が戻る。

硝煙と血の匂いが漂う中、セレナ、こはる、クレアが駆け寄ってきた。

「グラン、大丈夫!?」

「怪我はないですか?」

「あなたの表情……すごく険しいわ……」

三人の声に囲まれながら、グランは疲れを隠しきれぬ顔色で答える。

「……大丈夫だ。ただ少し魔力を使いすぎただけだよ」

彼は馬車へと案内され、フェンリルとナツが護衛としてついた。

車中、目を閉じたグランはただ一つの疑問に囚われ続けていた。

(なぜ……あいつが生きている? 二千年も経っているというのに。なぜ俺を助けた? これから何が起こる……?)

重い思考を胸に抱えたまま、彼らは王都へと帰還した。


◆謁見と祝宴

帰国翌日。王宮の謁見の間で、国王ノアが一行を迎えた。

「今回の任務、よくぞ成し遂げた。感謝の印として金貨五百枚を授けよう」

威厳ある声が広間に響く。グランたちは深く頭を垂れ、栄誉と共に安堵を噛みしめた。

夜。王宮は祝宴の華やぎに包まれた。

煌びやかなシャンデリアの下、豪奢な料理と酒が並び、楽師が奏でる音楽に合わせて舞踏が繰り広げられる。

フェンリルとナツは豪快に肉を頬張り、テーブルの皿を次々と空にしていく。

その隣では、セレナ・こはる・クレアが可憐なドレス姿で杯を傾け、華やかな笑みを交わしていた。

一方、グランは喧騒から離れ、庭園で月を仰いでいた。

静けさの中で吐いた言葉は、誰に聞かせるでもない独白だった。

「……これからが不安なんです。皆を守れるのか――」

背後から現れたノア国王が穏やかな笑みを浮かべる。

「その時は騎士団でも魔道士でも惜しみなく貸そう。今日は無事を祝って飲め」

「……ありがとうございます」

グランは深く一礼し、宴席へと戻った。


◆三人娘の“あーん”攻撃

席に戻ると、フェンリルとナツの横に腰を下ろしたグランを、待っていたかのように三人の少女が取り囲んだ。

「疲れてるだろうから、私が食べさせてあげる。はい、あーん♪」セレナ。

「わ、私も……! あ、あーん!」こはる。

「面白そうね。じゃあ私も……あーん♪」クレア。

三方向から迫る「あーん攻撃」に、グランは顔を赤くし、完全に狼狽える。

「ちょ、ちょっと待っ――」

そこへ、背後から国王が豪快に肩を叩いた。

「やっぱり嫁にもらうのか?」

冗談めいた一言に、グランはさらに真っ赤になり、慌てて料理をかき込みながらその場を逃げるように退出していった。

月夜の下、庭園に残る笑い声と音楽が、宴の夜を締めくくっていた。


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