第33話 再会、転生者との邂逅
「問答無用だ」
グランは低く呟き、手をかざす。瞬間、無数の魔法陣が空間に浮かび上がり、爆裂と衝撃が大地を揺るがした。
轟音と閃光に包まれた森の中、爆風に巻き込まれた魔物たちが次々と消し飛んでいく。
「各自、隊列を維持! 魔力の波動に乗れ!」
後方から宮廷魔道士たちが遠距離魔法を連射し、轟音が絶え間なく響く。
「斬り込め! 前衛、展開!」
近衛騎士団長の号令に応じ、剣士たちが突撃。鍛え上げられた刃が魔物の血を飛び散らせ、戦線は火花を散らす。
「行きます!」
「援護します!」
フェンリルとナツが一気に前線へ飛び出し、影のように戦場を駆ける。牙と爪、雷撃が魔物を切り裂き、戦況は一気に動き出した。
◆王女の震え
王女クレアは馬車の中で身を震わせながらも、窓越しに戦況を見据えていた。
「クレア様、大丈夫です。私たちが必ずお守りしますから」
セレナが振り返り、優しく微笑む。
「絶対に近づけさせませんから。ここは任せてください」
こはるも強い瞳で言い切った。
二人の声に、クレアは小さく頷き、胸の前で手を強く握った。
◆使い人の命令
戦場の中心に佇むのは、例の“使い人”。フードの下から冷ややかな声が響く。
「残念です。話は決裂しました。……まあ、いいでしょう。お前たち――ここにある肉は美味しいですよ。好きなだけ、お食べ」
その言葉と同時に、残った魔物たちがうねりをあげ、一斉に襲いかかってきた。
「試してみるか」
グランは静かに右手を掲げ、重力魔法を発動。
ズン――。
空間が沈み込み、大地ごと押し潰すような重圧が走る。
魔物たちは一斉に地面に叩きつけられ、身動きすら取れなくなった。
「な……なんだ、あの魔法は……」
「重力……? そんな高等魔法を、あの年齢で……!」
敵味方を問わず、誰もが目を見開き、声を失う。
◆二重の重圧
「グラン、危ない!」
セレナの叫びと同時に、一体の魔物が死角から凄まじい速度で迫る。
振り返ったグランの目に、その巨体が影のように覆いかぶさった。
(――間に合わない!)
だがその瞬間。
別の方向から、第二の重力魔法が発動。
大地を抉るほどの圧力が広がり、迫ってきた魔物を即座に押し潰した。
「っ……今の、俺じゃない……!」
困惑するグラン。
その耳に、不意に届いた声。
「これ、僕が与えた魔法じゃん。やっぱり……君、あの迷宮に来た人だったんだね」
◆再会
ゆっくりと振り向いた先。
そこには――懐かしく、そして深く記憶に刻まれていた顔。
二千年前、自らが“魔王グラディオン”だった時代に、自分を討った一人。
異世界から来た“転生者”。
「……まさか、お前がまだ生きていたとはな」
グランの声は低く、重い。
「うん。君がもう一度目覚めたって知って、嬉しかったよ、グランくん」
その姿は確かに生きていて、戦場のただ中に立っていた。
時を越え、因縁が再び交錯する――。




