第25話 反省と決意の夜
ギルドに戻った一行は、戦利品の魔石を換金するため受付へ向かった。
だが、すべてを持ち込めば不審に思われることは明白だった。
グランは冷静に判断し、二、三個だけを換金することに決めた。
町を抜け、自宅に戻ると、安堵と疲労が入り混じった静けさが訪れる。
グランは一人、机に置かれた手紙を見つめながら思案していた。
「……2000年前と似たような魔力を感じた。あの転生者がダンジョンを作ったのか? なぜ力を授けた……」
自問しても答えは出ない。転生者はとうに亡くなっているはずだ。
グランは思考を断ち切り、代わりに胸に浮かんだ温もりを思い返した。
こはるに真実を告げた。
そのうえで彼女は「種族なんて関係ない」とはっきり言ってくれた。
その言葉が、どれほど自分を救ったか――。
「このパーティーこそが……俺の目指す世界の理想に近いのかもしれない」
元魔王国へ向かう前に、こはるに真実を伝えられたことは、確かな安堵となっていた。
◆セレナの不安
そのころ。セレナは自室のベッドに腰を下ろし、ぼんやりと手を握りしめていた。
目を閉じれば、こはるの笑顔と声が蘇る。
――あの子は「怖くない」って言ってくれた。でも……本当に?
心の奥底では怯えているんじゃないか。
明日からも同じように接してくれるのか。
それを考えるだけで、胸の奥がずきりと痛んだ。
「私は……もうヴァンパイアクイーン。今の魔王様の片腕であり、魔族四天王のひとり娘……」
そう自覚しているからこそ、セレナは揺れていた。
魔王の片腕として生きる責任と、ひとりの少女としての不安。
その狭間で揺れる想いが、彼女を眠らせてはくれなかった。
◆それぞれの決意
一方、こはるもまた静かに考え込んでいた。
「皆が魔族……。でも、それがどうしたの? 私を仲間として迎えてくれた。それが何より嬉しい。だから、私も変わらずに仲間でいたい」
彼女の胸には、揺るぎない想いが宿っていた。
フェンリルもまた、自分の役割を見つめ直していた。
「私は魔族四天王、聖獣代表。もっとグラン様の力にならねばならない」
あの戦いを経て、さらなる強さを求める覚悟が固まる。
なつは一行の姿を思い返し、感慨深げに呟いた。
「人間と魔族が、これほど自然に手を取り合うとは……。魔王様に仕えるだけでなく、魔族の未来を見据えるべきかもしれない」
そして、ユエもまた魔王国で考えを巡らせていた。
「悪魔は魔族の中でも特別。魔王様の理想を叶えるため、私がどう動くべきか……。四天王として、今こそその知恵を尽くす時」
その夜、それぞれが胸の内に誓いを抱き、眠りについた。
彼らの想いは異なりながらも、確かに同じ未来を目指していた。
――魔王グランを中心に、新たな時代を切り開くために。




