表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
23/94

第23話 迷宮での真実と覚醒

王女殿下の護衛任務を控えたグランたちは、連携と戦闘訓練のため、中級迷宮への挑戦を決めた。

メンバーはグラン、セレナ、こはる、フェンリル、そして新たに加わったユエの息子・なつ。

迷宮に入る前、グランは戦闘隊形を確認する。

「セレナ、こはるは前衛補助。なつは支援と後衛攻撃。フェンリルは自由に動いて状況対応を頼む」

その指示に一同が頷き、いざ迷宮へと足を踏み入れた。


◆災厄級への変貌

迷宮に入ってすぐ、空間が軋むような不気味な音が響いた。

『強い戦闘能力を確認。――シークレットモード起動』

機械的な声が木霊し、周囲の空間がねじれる。

次の瞬間、中級迷宮は突如として「災厄級ダンジョン」へと姿を変えた。

「空間ごと……構造が書き換わった……!?」

グランが歯を食いしばる。

目前に現れたのは、群れを成すBランク相当の魔物たち。狼型、巨人型、異形の昆虫。

だがグランは即座に判断を下す。

「数は多いが、質は問題ない。突破する!」

剣と魔法、俊敏な連携で魔物の群れを薙ぎ払い、彼らは進んでいく。


◆猛攻の階層

だが次の階層では、Aランク級の魔物が待ち構えていた。

巨体のオーガが大斧を振り下ろし、地面が砕ける。

「っ……はぁあああ!」

こはるが風を纏った剣を振り抜き、斧の軌道を逸らす。セレナがその隙に雷弾を叩き込み、オーガの体を貫いた。

「連携が乱れないように!」

グランの声に全員が頷き、全力で戦い抜く。

息を切らしながらも、彼らは最下層直前の安全地帯に到達した。


◆最奥の絶望

そこは異様なまでに広く、人工的な気配すら漂う空間だった。

しかし次の瞬間、空間が揺れ、無数の魔物が姿を現す。

「……SSランク……いや、それ以上か」

ベヒーモス、変異種のドラゴン、そしてSSSランク級の怪物まで。

圧倒的な気配が押し寄せ、空気が重くなる。

「広範囲魔法が使えない……この空間、脆すぎる」

グランは即座に結界を張りながら判断した。

フェンリルは影のように走り、なつは後衛から支援魔法を放つ。

セレナとこはるは必死に剣と魔法で抗った。

だが数の暴力に押され、こはるは吹き飛ばされ剣を失い、セレナも攻めあぐねて防戦一方となる。

「くっ……!」

二人が孤立し、窮地に陥る。

グランが結界を展開して駆けつけ、二人を庇った。

だがその上から、SSSランクの影が迫る。


◆ヴァンパイアクイーン

「……もう、しょうがないね。ごめん、グラン、血もらうね」

セレナが囁くと同時に、彼の首筋へと牙を立てた。

赤い光が爆ぜ、彼女の身体を包む。

次の瞬間、華やかなドレスのような装束を纏い、黒紫の翼を大きく広げた妖艶な姿がそこに現れた。

伸びた爪と牙、紅に輝く瞳。

「ヴァンパイアクイーン……!」

なつが目を見開き、笑みを浮かべる。

フェンリルは低く呟いた。

「懐かしい姿ですね……まるで、あの頃の戦場を思い出します」

セレナは仲間たちを振り返り、わずかに悲しげに笑った。

「だましてごめん。でも……皆を守るために。魔王の片腕として――道を切り開く!」

咆哮とともに飛び出した彼女は、無数のコウモリを召喚し、敵を混乱に陥れる。

鋭い爪がSSランクの魔物を斬り裂き、血の魔力が怪物たちを魅了して同士討ちへと誘う。

圧倒的な暴力と美が混ざり合った戦いに、戦況は一変した。

仲間たちも体勢を立て直し、こはるは再び剣を握り、なつは支援を強め、フェンリルは死角を突いて次々と魔物を討ち倒す。

ついに、空間を満たした災厄の群れは殲滅された。


◆告白と絆

戦いの後、荒い息を整えながらも、仲間たちは互いを見つめ合った。

こはるは驚きに目を丸くしながら、セレナへと視線を向ける。

グランは静かに口を開いた。

「……もう隠すのはやめよう。俺は魔王の転生者だ。フェンリルは聖獣。そしてセレナは……ヴァンパイアクイーンであり、四天王の娘。ユエやなつも悪魔で、皆、魔族だ」

こはるはしばらく黙り込んでいた。

だが、やがて大きく息を吐き、ふわりと笑った。

「ごめんなさい。情報が多すぎて混乱してたけど……整理したら、なんとなく分かりました」

セレナが不安そうに翼をたたむ。

「……ごめんね。こんなヴァンパイアの姿、怖いでしょ」

こはるは首を横に振った。

「私だって耳としっぽありますし! 同じです! それに、魔族とか人間とか犬とか関係ありません。私を仲間として扱ってくれたこと、本当に嬉しかった。だから……私も皆さんを仲間だと思ってます!」

「……私を動物扱い……」

フェンリルが小さく拗ねたように呟き、一同は思わず笑った。

戦いの疲れと安堵、そして確かな絆が、そこにはあった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ