表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
19/94

第19話 コカトリス討伐戦

森の奥、鬱蒼と茂る木々の間を抜けると、目的地とされた小高い丘が姿を現した。

辺りには鳥のような魔物――コカトリスの羽ばたく音と、低く響く鳴き声が木霊している。

グランたちは周囲を警戒しながら、丘の斜面を慎重に登った。

「いた、あれがコカトリスか」

グランが指さす先に、一体のコカトリスが堂々と羽を広げていた。

「まずは一体、いくわよ!」

セレナが魔弾を放つ。その光弾が空を裂き、戦闘の合図となった。

コカトリスは鋭い嘴を開き、毒混じりの咆哮を放ちながら飛びかかってくる。だが、連携を取ったグランたちの前にその動きはあまりに遅く、剣と魔法の連撃で瞬く間に討ち倒された。

拍子抜けするほどの速さだった。

だが――。

「……あれ? あと二体いるはずじゃ……」

こはるが辺りを見回す。しかし次のコカトリスの気配がどこにも見当たらない。

そのとき、森の奥から不気味な鳴き声が響いた。先ほどのものとは違う、低く凶悪な響き。

「こっちだ!」

グランが駆け出す。仲間たちもすぐに続いた。


たどり着いたのは開けた岩場。

そこでは――一体の巨大な魔物が、倒れたコカトリスを貪っていた。

「……コカトリスじゃない。これは――コカトリス亜種……!?」

セレナが息を呑む。

魔物図鑑によれば、コカトリス亜種はAランク相当の強力な魔物。

だが目の前にいるのは、二体。

「グラン、どうする?」

「……分かれて対応するしかない。ユエ、俺と一緒に右を。セレナ、こはる、左を任せる。フェンリルは町の守りだ。ここで時間はかけられない」

即座の判断に、仲間たちは頷き、それぞれの獲物へと散った。


◆激闘

グランとユエの前に立ちはだかる亜種は、空気を切り裂く羽音を響かせながら猛然と突進してきた。

グランは剣で受け流し、ユエが妖艶な魔法で翼を縛る。だが、その力は凄まじく、鎖のような魔法陣を容易く引きちぎって咆哮を上げた。

「チッ……二千年前よりも強いな」

グランは低く呟き、さらに剣を構える。

一方、セレナとこはるも必死に抗っていた。

コカトリス亜種の爪が、こはるの防具をかすめて裂いた。金属が悲鳴を上げ、こはるは小さく悲鳴を上げながら後退する。膝が震え、息が荒くなる。

それでも――彼女の瞳は、決して逸らされてはいなかった。

(……こわい。でも、あの時……グランさんに、セレナさんに助けてもらった。今度は、私が)

「行きます……!」

小さな声が、決意を伴って響いた瞬間。こはるが再び前へ踏み込もうとしたその時、セレナが横へ滑り込む。

防御結界が張り巡らされ、こはるの目の前に魔力の盾が展開された。

「こはる、あんた、死ぬ気? 傷、まだ癒えてないでしょ」

「でも……私、守ってもらってばかりじゃ……!」

セレナは口元にわずかな笑みを浮かべる。

「頼るのは、甘えじゃない。信じて、背中を預けることよ。――それが“連携”ってもの」

こはるの目が見開かれた。数秒の沈黙の後、ふたりは互いに頷き合う。

「セレナさん……!」

「よし、行こう。“仲間”として。そして、良きライバルとして!」

二人が手をタッチするようにして動き出す。

こはるの剣が風を切り、セレナの魔力が光の檻となって亜種を囲む。

魔力と剣撃のリズムが重なり、まるで舞のように連撃が繰り出される。

さすがのコカトリス亜種も、予想を超えた連携に押されていった。

最後はこはるの渾身の一閃が首筋をとらえ、鮮血が舞う。

ずしん――と大地を揺らし、魔物が崩れ落ちた。


そのとき、二人の背後に影が降り立つ。

「終わったな。……お疲れ様」

振り返れば、グランが静かに立っていた。背後には、すでに討ち倒されたもう一体の亜種の残骸が転がっている。

こはるははっとして言葉を失う。だがセレナがぽんと彼女の背中を叩いた。

「いい戦いだったわよ。ちゃんと、背中を預けられてた」

その言葉に、こはるは顔を赤らめながらも、小さく笑って頷いた。

一方、グランの瞳は鋭さを増していた。

(情報に無かった亜種……それも、この魔力。二千年前よりも強い。……誰かが仕組んでいる?)

遠くに、微かに残る異質な魔力の残滓。

それは、ただの魔物ではなかった。

グランの胸に、またひとつの疑念が芽生えていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ