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第13話 冒険者登録

陽光が差し込むダイニング。窓の外では鳥のさえずりが響き、穏やかな時間が流れていた。

「卒業、おめでとう!」

テーブルの上には、レナ手作りの豪華な料理が並んでいた。リオが高らかに乾杯の声を上げ、グランたちの新しい門出を祝う。

こはるも招かれており、少し緊張しながらも顔をほころばせていた。

「本当にありがとう、グランさん。セレナさんも……学院生活、あっという間だったね」

セレナはにこりと笑い、湯気の立つスープを口に含む。

「あなたが最後にあんなに目立つなんてね、こはる。まさか木刀で魔法を切るなんて……ふふっ」

「や、やめてくださいよぉ……!」

恥ずかしそうに頬を赤らめるこはるに、場が和やかな笑いに包まれる。

そんな中で、グランは真剣な表情を浮かべ、箸を置いた。

「……母さん、父さん。俺たち、これから冒険者になることに決めたんだ」

レナとリオの手が止まる。

「こはるの両親からは、すでに許可をもらってる。もちろん危険な道だってことはわかってる。でも、俺には――確かめたいことがある。だから、まずは冒険者として力をつけたい」

少しの沈黙。やがてレナは優しく微笑んだ。

「……あなたが自分で考えて選んだ道なら、母さんは応援するわ。でも、怪我だけはしないでね」

「うむ、父さんとしても反対はせん。むしろ誇らしいくらいだ。……だが、いきなり戦場には行くなよ。まずはクエスト前に、みんなでどこか出かけよう。お祝いも兼ねてな」

「お出かけ……いいですねっ!」

こはるが嬉しそうに声を上げる。

「家族との思い出も、今のうちにしっかり作っておくのがいいわね。……きっと、忙しくなるわよ」

セレナも頷く。

「ありがとう。じゃあ、冒険者登録は三日後。その前に、みんなで――一緒に出かけよう」

温かな空気が、静かに部屋を包んでいた。


三日後。

「ようこそ、冒険者ギルドへ!」

快活な声で出迎えたのは、栗色の髪を揺らす受付嬢だった。胸元にはギルドマスター補佐の証である銀のバッジが輝いている。

「本日は冒険者登録とのことですね。まずは簡単に流れをご説明します。適性検査を受けていただいた後、座学にて基礎知識を学んでいただきます」

「よろしくお願いします」

「……ふふ、初々しいわね」

「が、がんばりますっ!」

グラン、セレナ、こはるは案内され、適性検査室へ入る。部屋には魔力測定用の水晶球と、剣技を試すための装置が整えられていた。

グランは何気ない顔で水晶球に手をかざす。魔力が波のように流れ出すが、すぐに掌の隠蔽魔法で覆い隠した。

「……うーん、魔力適性は……Bランクですね。平均より少し下くらいです」

ギルド員は首をひねる。

セレナも魔力を抑え、C判定。こはるは微弱で、ほぼ最低のD判定だった。

次に剣の適性。こはるが剣を握った瞬間、空気がわずかに震えた。しかしグランがすかさず魔力で干渉し、その気配を包み込む。

「ほう……反応はC。特に際立ったところは……いや、実用には十分です」

(本当は剣技SSなんだが……バレないようにしないとな)

グランは心の中で苦笑した。


適性検査を終えた三人は講義室に案内された。中年の講師がホワイトボードの前に立ち、授業を始める。

「では、座学を始めます。冒険者の基本は知識と行動です。まず、魔物と魔族の違いについて」

グランは椅子に寄りかかりながら、懐かしさを覚える。

「魔物とは自然に発生した存在です。凶暴で、人間や他種族に害を及ぼす存在。代表的なのはゴブリン、コボルト、スケルトン、スライムなどですね」

「一方で、魔族とはかつて文明を持ち、社会を形成していた知的生命体です。現在はほとんど確認されていませんが、悪魔、妖精、竜族などが該当します」

「文献によれば、かつて魔王国という国が存在し、その王のもとにはヴァンパイア、フェンリル、リヴァイアサン、アンデッド、獣魔といった強力な魔族が集っていたそうです」

(昔、よくゴブリンロードが群れを引き連れて攻めてきたな……若手の訓練にはちょうど良かったんだが)

講師は続ける。

「現在、最も脅威とされているのは魔物です。理由は無秩序に増えること。そして時に“突然変異種”が現れることです」

セレナが小声で囁く。

「なんか聞いてると……あの時代より人間のほうが怖いわね」

「次にダンジョンについて。自然発生なのか人工なのか、多くが謎に包まれています。構造は階層状で、最深部にはボスが存在し、討伐すれば希少なアイテムが手に入ります」

「ランクはEから始まり、Sを超えた“SS級”も存在します。中には未だに攻略されていない“迷宮”と呼ばれるものもあります」

「……す、すごい……」

こはるの目がきらきらと輝く。

「さて、冒険者ランクについてですが、Dランクからスタートします。ギルドは各国に存在し、基本的なシステムは統一されています。ただし、剣聖の国は軍事国家であり、冒険者の活動はほとんどありません」

「ギルド本部は勇者連合国にあります。あくまで情報収集と運営が主であり、冒険者への依頼や指示は各国のギルドが担います」


講師は地図を取り出し、北方を指差した。そこには赤字で「危険指定区域」と記されている。

「……では、ここまでが冒険者制度の基礎だ。最後に、元魔王国について補足しておく。ここが旧・魔王国領。現在は“瘴気”や“魔力濃度”が異常で、生半可な冒険者では生きて帰れん。国家およびギルドによって厳重に封鎖されている」

「瘴気……」

セレナの瞳が陰る。

「入ること、できないんですか?」

こはるが問いかける。

「できるとも。ただし条件がある。まずはAランク以上の冒険者であること。そして、国もしくはギルド本部からの特別許可を得る必要がある。さらに――」

(……さらに?)

グランが眉を寄せる。

「――“結界”を突破できる者に限られる。これは特殊な魔法障壁で、通常の転移や突破魔法では無効。現在、世界でこの結界を越えられるのは、たった三組の冒険者だけだ」

「す、すごい……!」

こはるが息を呑む。

「……でも誰がそんな結界を?」

セレナが首をかしげる。

「それは……わかっていない。二千年前の“英知の民”が張ったとされるが、詳細は記録に残っておらん。ただ――」

その言葉に、グランの眉がぴくりと動いた。

(今の言い回し。“英知の民”……まさか、大賢者か?)

「いずれにせよ、今となっては“禁忌の地”。勝手に入ろうものなら国家反逆罪に問われる」

「結界の魔力、どんな感じなの?」

セレナが問いかける。

「……古の魔術と似ているとしか言いようがないな。魔術師なら近づくだけで吐き気を催すような“圧”を感じるらしい」

(確かに、あの結界……見覚えがある。俺の時代、唯一俺の魔力を封じることができた“あいつ”の……)

グランはふと目を伏せた。

(――セレフィア。大賢者、お前か)


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