第107話 エピローグ
■新たな国の始まり
リベルノア王国に各国の首脳が集まり、戦後処理の会議が行われた。
議題の中心は、剣聖の国――四季連合国の扱いである。
「剣聖の国は、もはや維持不可能だ。四季連合国は解体し、新たに国を建て直すしかあるまい」
ノア国王の言葉に場は静まり返る。やがて王は視線を向けた。
「そこにいるグラン。君は魔王を降り、英雄としてこの戦いを終わらせた。……だからこそ、君に託したい。新たな国を導く者として、王になってくれ」
グランは深く息を吸い、真っ直ぐに答える。
「……はい」
こうして四季連合国は解体され、リベルノアとイーストランドの後ろ盾を受けて再建の道を歩むことになった。
■家族との再会
会議を終えたグランを迎えたのは、懐かしく温かな家の匂いだった。
台所ではリオとレナが食事を整え、食卓には久しぶりに家族がそろっていた。
「父さん、母さん……俺の作る国に、一緒に来てほしい」
だがリオとレナは微笑んで首を振る。
「ここはお前が帰ってくる場所だ。私たちはここを守っている。だから、いつでも帰ってこい」
その言葉に、グランの瞳から涙が溢れた。
二千年の宿命を背負った魔王ではなく、ただ十五歳の少年として――。
■王女の宣言と小さな騒動
和やかな空気を破るように、扉が勢いよく開かれた。
「私は行きますよ?」
クレア王女が堂々と告げ、場は凍りつく。
「……は?」
呆然とするグランをよそに、クレアは胸を張って続けた。
「正式に、父より命じられましたの。グランに嫁ぎ、彼の国の女王として支え、貴族の心得を指導せよと」
「ちょ、ちょっと待って! 何それ!」
セレナが立ち上がり、頬を赤らめて声を張る。
「な、なんの話ですか!」
こはるまで慌てふためき、耳まで真っ赤になった。
困惑する二人を前に、グランはただ苦笑を浮かべるしかなかった。
その場は温かな食事と、にぎやかな言い合いで包まれていった。
■リア王国の成立
やがて各国の合意を経て、魔族の希望者たちはグランのもとに集い、新たな国を築くこととなった。
その国の名は――「リア王国」。
クレアは正妻として女王の座に就き、セレナは秘書兼側室として仕え、こはるは護衛兼側室として寄り添った。
そしてフェンリルは――表向きは「ペット」扱いであったが、実際には家族以上に近しい存在として王家に居続けた。
表の体裁がどうであれ、正妻争いは終わらない。むしろ舞台を変えて、賑やかに続いていった。
リア王国は、人間と魔族が共に暮らす国として発展し、時に衝突もあったが、そのたびに話し合いと協力で乗り越え、平和を守り続けた。
■英雄の眠る場所
――時は流れた。
「英雄グランここに眠る」
墓碑にはそう刻まれている。
その前に立つのはセレナと、小さな幼女の双子。セレナの娘だ。
傍らには、年老いたこはるとその息子、白髪を結い上げた気品あるクレアとその娘の姿がある。
セレナは墓前に膝をつき、微笑みながら囁いた。
「……みんな、幸せですよ」
柔らかな風が吹き抜け、花々が揺れた。
そして少し離れた丘の上から――フェンリルが遠吠えを響かせる。
「ウォオオオオオン……!」
その声は天へと昇り、仲間を想う誇りと愛情を告げていた。
英雄グランの人生は幕を閉じた。
だが、彼が築いた国と、仲間たちの絆は永遠に受け継がれていくのだった。




