第105話 神聖の光 ― 終戦の奇跡
使い人を倒した――だが、それで戦いは終わらなかった。
場を埋め尽くす数万の軍勢は、逆に指揮官を失ったことで狂気に駆られ、獣のような咆哮を上げながら押し寄せてくる。
地面は震え、空は暗黒に染まり、もはや世界そのものが終焉を迎えようとしていた。
蓮もセレナも、ふらつきながら立ち上がったが、その身体に残された力はわずかだった。
グランは剣を握りしめ、決意を固める。
「……やはり使うしかないか」
その声に蓮が顔を上げ、青ざめた表情で問いかける。
「……“核魔法”を?」
グランは静かに頷いた。
「もう誰も戦えない。これで全てを終わらせるしかない」
核魔法――。
敵も味方も分け隔てなく焼き尽くす、禁断の究極魔法。
使えば仲間も死ぬ。だが、もはや選んでいる余裕はなかった。
蓮は苦悩の表情を浮かべながらも、やがて頷いた。
「……わかった。共に詠唱しよう」
二人は並び立ち、声を重ねる。
大地が震え、空気が歪み、破滅を呼ぶ詠唱が終わりに近づいたその時――
■天を貫く光
遠く、地平の彼方で。
突如として、天空を貫くほどの巨大な光の柱が立ち昇った。
「……っ!」
その場にいた全員が息を呑む。
圧倒的な神威――。
その魔力の正体を、誰よりも早く蓮は悟った。
「……ひかり」
世界を覆い尽くすほどの光。
それはただの魔法ではなかった。
魔物たちは、その光に触れた途端、悲鳴を上げる間もなく次々と消え去っていく。
人間の兵もまた、戦う気力を奪われ、膝をつき、武器を取り落とした。
剣聖の国も、四季連合国の兵も――その敗北を悟り、混乱のまま退いていく。
やがて戦場に訪れたのは、静寂と、神聖なる光のぬくもりだった。
■奇跡の中心で
皆が導かれるように、その中心――ひかりのもとへと集まった。
そこに立つ彼女は、穏やかな笑みを浮かべ、まるで神そのもののように輝いていた。
「……これが、失われた魔法の真髄」
誰かが震える声で呟いた。
神聖魔法。
聖女が扱う聖魔法が“神の力を借りる”魔法であるならば――
神聖魔法とは、神そのものの力を顕現させる魔法であった。
ひかりは振り返り、仲間たちに告げる。
「……これが、私がここに来た役目。これで――蓮を、そしてみんなを守れる」
その瞳には涙が光っていた。
こうして、長きにわたる最終戦争は、ついに幕を閉じたのであった。




