第102話 グランと使い人 ― 闇に挑む者たち
「これはこれは、グランさん。ごきげんよう。やはり貴方と戦う運命でしたか」
冷たい笑みを浮かべながら、使い人は静かに歩み寄る。
その足取りは迷いなく、戦場の血と炎を背景に、不気味なほど落ち着いていた。
「……なぜ、こいつを殺した」
グランの声は怒りに震え、握る拳から魔力が滲み出す。
使い人は淡々と告げた。
「実は私の兄でしてね。もっとも、腹違いですので、この人は私の存在すら知りませんでしたが」
一片の情すら感じさせない瞳。
その無慈悲な光に、グランの胸に怒りがさらに燃え上がる。
■使い人の思想
「この世は昔から争いの歴史でした」
使い人の声は冷ややかに響いた。
「だから私は考えたのです。この世界から感情を無くせば、争いはなくなる。
感情を捨て、ただ私のために働く駒となる。それこそが平和なのです。……まぁ、貴方には理解できないでしょうが」
「……」
グランの瞳が鋭く細められる。
「もういい。言葉は要らない。早く決着をつけよう」
その瞬間、閃光のような剣撃が襲いかかる。
■怒涛の攻防
「ッ……!」
グランは辛うじて受け流した。だが、止むことのない連撃が嵐のように押し寄せる。
防御に徹するしかなく、徐々に押し込まれていく。
「守ってばかりでは倒せませんよ?」
挑発めいた声と共に、さらに速度を増す斬撃。
「……ならば!」
グランの全身から竜族の力が噴き上がる。大地を震わせる膨大な魔力が迸り、空気を灼いた。
「これが最後の戦いだ!」
怒号と共に、一気に攻勢へ転じる。
しかし――
「残念です」
使い人は容易くその一撃を防ぎ、逆に打ち払った。
「これがあなたの実力ですか。……失望しました」
無慈悲な斬撃が放たれ、グランの体は地に叩き伏せられる。
■仲間の参戦
「グラン!」
セレナが駆け寄る。だが次の瞬間、闇の影が覆いかぶさり、彼女の身体を弾き飛ばした。
「うっ……!」
血を吐き、地面に崩れ落ちるセレナ。
「次はあなたですか」
使い人の視線が、蓮へと向けられる。
「……やらせない!」
蓮は魔法を紡ぎ、目にも止まらぬ速さで応戦する。
火炎、雷撃、重力の魔法が次々と放たれ、使い人を押し込むかに見えた。
だが――
「結局、チート級の力など……所詮は付け焼刃に過ぎない」
闇魔法が蓮の防御を穿ち、その身体を吹き飛ばす。
「くっ……まだ……!」
■漆黒の絶望
「これで終わりです」
使い人の両腕に膨大な闇が収束する。
次の瞬間、辺り一面を覆い尽くすほどの巨大な闇魔法が放たれた。
轟音と共に、大地が震え、空は光を失い、戦場そのものが漆黒に飲み込まれていく――。




