第100話 セレナの戦い ― 愛と誇りの証明
戦場の一角。
血と炎が渦巻く前線で、セレナは牙を剥き、吸血鬼の力を駆使して敵を蹴散らしていた。
その時、不意に周囲の軍勢がざわめき、道を開くように退いていく。
空気が重く淀み、冷たい気配が迫る。
そこに現れたのは――ミリアだった。
「セレナ。……お久しぶりね。少しは強くなった?」
その声音には懐かしさと共に、深い憎悪が宿っていた。
セレナは一歩踏み出し、静かに応える。
「ミリアさん……。はい、強くなりました。だからこそ、今からでもこちらに来ませんか? まだ遅くはありません」
だが、返ってきたのは狂気を孕んだ笑みだった。
「何を言ってるの、この泥棒猫! ……グランは私のすべてだった。四天王として命を懸けて戦い、認めてもらいたくて、褒めてもらいたくて……でも、あの人はいつもあなたばかり気にかけていた。封印の時でさえ……選ばれたのは私じゃなかった!
だから決めたのよ。グランを殺して、その身体を永遠に保存する。そうすれば、グランはずっと私を見ていてくれる……これこそが永遠の愛!」
狂気の告白と共に、ミリアが襲いかかる。
セレナは応戦し、ヴァンパイアクイーンの姿に変貌して迎え撃つ。
だが、浴びせられる罵倒と嫉妬の言葉が心を揺さぶり、徐々に押し込まれていく。
「やっぱり弱いじゃない! あなたにグランの横は似合わない!」
ミリアの叫びに、セレナの瞳が揺れる。
だが――次の瞬間、彼女は強く言い放った。
「……さっきからうるさいわね! 私は――グランが好きなの!」
胸に秘め続けた想いが、怒りと共に溢れ出す。
「誰に何を言われても、私はグランの隣に立ちたい! あの人が笑うときも、泣くときも、苦しむときも――全部、共にいたいの!
それが私の愛であり、私の誇り! グランは……私が守る!」
その叫びと共に、セレナの身体はさらなる進化を遂げた。
ヴァンパイアクイーンを超越し、伝説に語られる存在――ヴァンパイアロードへ。
魔力も気配も桁違いに膨れ上がり、放たれた魔法は戦場を震わせた。
「これが……私のすべて!」
迸る魔力に吹き飛ばされ、ミリアは地に膝をつく。
「……私が、間違っていたの? グラン……私は……」
その刹那、後方から伸びた腕がミリアを支えた。
振り返った先に――グランが立っていた。
「ミリア。お前が何を考えていたか、全部は分からない。けど……二千年も生きて、戦い続けてくれてありがとう。お前なりに魔族を思い、必死だったんだろう?」
涙をにじませながら微笑むグランに、ミリアの心は大きく揺れる。
「……どうして……私、あなたを殺そうと……」
「それは勘弁してほしいな。でも……ミリアなら、やり直せる。一緒に頑張ろう」
その言葉を受け、ミリアは力なく微笑んだ。
「……やっぱり駄目ですね、私。グラン様のこと、今でも愛してる。でもセレナも……きっと同じくらい愛してるのでしょうね。……もう、疲れました。最後に……ありがとうって言われて、救われました」
静かに目を閉じ、ミリアは自ら命を絶った。
グランはその身体を抱き締め、嗚咽をこらえながら涙を流す。
その光景をセレナは黙って見届けていた。
胸に刻まれたのは、愛の痛みと、決して揺らがぬ誓い――。




