表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/1

あーかい部! 26話 蚊

ここは県内でも有名な部活動強豪校、私立池図女学院。


そんな学院の会議室、現場……いや、部室棟の片隅で日々事件は起こる。



3度の飯より官能小説!池図女学院1年、赤井ひいろ!


趣味はケータイ小説、特筆事項特になし!

同じく1年、青野あさぎ!


面白そうだからなんとなく加入!同じく1年、黄山きはだ!


独り身万歳!自由を謳歌!養護教諭2年生(?)、白久澄河(しろひさすみか)



そんなうら若き乙女の干物4人は、今日も活動実績(アーカイブ)を作るべく、部室に集い小説投稿サイトという名の電子の海へ日常を垂れ流すのであった……。

池図女学院部室棟、あーかい部部室。




「…………今だっ!」




あさぎの両の掌が合わさる鋭い破裂音が静かな部室に轟いた。




「…………いったぁ。」




あさぎが真っ赤になった自身の両の掌を確認するも、獲物は無し。




「……、ちっ。」




姿は見えずとも、耳をすませば虫の(羽)音。




「ぐあぁぁぁ……、」




あさぎは机にへたれ込んだ。




「ちゃおっす。今日も死んでるねぇあさぎちゃん。」


「きはだぁ……もうやだむしきらい。」


「サソリでも食べた?」


「……現在進行形で飛んでる。」


「ん〜?」




きはだが耳を澄ますと、確かにどこからか不快な虫の羽音が聞こえてきた。




「きはだ小麦粉もってる?」


「持ってないけど何に使うの?」


「粉塵爆発。」


「こいつぁくれいじーだぜ。」


「じゃあお風呂用洗剤でいいや。ある?」


「部室をあわあわにするつもり?」


「んでもってばいばいきんよ。」


「……。」


「あわあわになったら白ちゃんアワアワしそうだよね……なんつって。」


「こいつぁ相当参ってるねぇ……。」


「モスキート、死すべし……。」




机にへたれ込むあさぎの腕に虫刺されの跡が散在していた。




「あさぎちゃん、虫に大人気だねぇ。」


「わけてあげたい……。」


「え?血ぃ吸っていいの?」


「処す。」


「怖ぁ……。」


「同級生に血ぃ吸われる方が怖いよ……。」


「仕方ない、鉄ゼリーで我慢するか。」




きはだはカバンをガサゴソして、大きく『鉄』と書かれたゼリー飲料を取り出した。




「お?今日もあさぎは元気に死んでるな。」




ひいろ入室。




「なんもかんも蚊が悪い。」


「蚊?」


「あさぎちゃんモテモテなんだよぉ〜?」


「なんも嬉しくない……。」


「そうかそうか、女の子にモテモテとは羨ましい限りだな。」


「女の子?」


「そういえば、血を吸うのはメスだけなんだよねぇ。」


「えっっ、」


「自分の血に毒盛れればいいのに……。」


「それ、自分が死なないか?」


「フグとかも自分の毒効くんだよねぇ。」


「なんだっけ、トトロドトキシン?」


「隣のやつだねぇ。」


「森住まいってことしか共通点がないな。」


「フグの毒はテトロドトキシンだよぉ……。」


「じゃあ、肌に毒を塗るのはどうだ?」


「ひいろ、虫除けスプレーって知ってる……?」


「既にあったな……。」




3人の会話が一段落しかけた頃、ふたたび部室に虫の羽音が。




「「「!」」」



「来たね……!?」

「いるな……。」

「……。」




3人が席を立ち臨戦体制に入った。




「……そこだっ!」

「そこっ!」

「うりゃっ!」




3人の両の掌が合わさる鋭い破裂音が時間差で静かな部室に轟いた。


……が、誰の手にも亡骸はなかった。




「くっ……、今度こそ!」

「てりゃぁあ!」

「そこだっ!」




再トライするも、




「「「ぐぁぁぁ………!!」」」




時間差でダイナミック手拍子する3人を嘲笑うかのように、しばらく蚊は部室を徘徊し、やがて飛び去っていった……。






あーかい部!(4)




あさぎ:投稿完了


ひいろ:今日は蚊を叩いてただけだったな


きはだ:何してたんだろうねわたし達……


白ちゃん:ほんと何してたのよ


ひいろ:あさぎが女の子にモテモテだった


白ちゃん:あのあさぎちゃんが……?


あさぎ:人間だったら良かったんですけどね

あさぎ:あと『あの』ってなんですか


白ちゃん:あ〜、蚊ってメスしか血吸わないもんね


きはだ:あさぎちゃん、顔は良いのに……


ひいろ:顔はいいんだけどな……


あさぎ:『は』ってなに


白ちゃん:あさぎちゃんもこっち側の人間ってことよ


あさぎ:失礼ですね私が女子力虫ケラ以下だなんて


ひいろ:失礼の応酬だな


きはだ:争え……争え……


白ちゃん:私とあさぎちゃんが争ってもきはだちゃんに得なんてないでしょ


きはだ:得はないけど愉悦


あさぎ:なんだそれ


きはだ:カブトムシとか戦わせて遊んだことない?


白ちゃん:ま〜た懐かしい例えを……楽しかったわね


ひいろ:炙り出される田舎っ子


きはだ:そう、愉しいんだよ


あさぎ:字ぃ違くない?


きはだ:ご指摘ありがとうカブトムシ1号


白ちゃん:私とあさぎちゃんをカブトムシに見立てて争う様を愉しんでるわけね


あさぎ:人の生き血を啜るような真似して楽しいか……!?


ひいろ:生き血を啜られまくってる人の言葉は違うな


白ちゃん:それ物理的なやつじゃない?


きはだ:お〜、一周回ったねぇ


ひいろ:なんか……回ったな


あさぎ:回ったところで私の生き血は啜られ続けてるんだけど

あさぎ:痒い


白ちゃん:蚊取り線香使ったら?


あさぎ:既に私の部屋は葬儀場の香りです


ひいろ:何個使ってるんだよ……


あさぎ:5個かな


きはだ:モクモクで草ァ!


白ちゃん:贅沢な使い方ね


あさぎ:毎年この時期のためにお小遣い節約してるんですよ……


ひいろ:それはさすがに


きはだ:お金の使い方間違えまくってない?


白ちゃん:もっとリーズナブルな虫対策ありそうな気がするけど……


あさぎ:この中でクリスマスプレゼントに蚊取り線香を頼んだことがある者だけ石を投げなさい


ひいろ:嘘だろwww

白ちゃん:冬場に買いづらいものを……

きはだ:親御さん涙目www


あさぎ:翌年からちょっと多めにお小遣い貰えるようになった


きはだ:親公認www


ひいろ:そんな棺みたいな部屋に蚊は入ってくるのか


白ちゃん:棺って


あさぎ:たまに紛れ込んでくる

あさぎ:生きて帰さないけど


白ちゃん:『ここがお前の墓場だ』を現実でやってる人初めて見たわよ……


ひいろ:完全に悪者のアジトだな


あさぎ:そうかも


きはだ:蚊取り線香以外に何かやってるの?


あさぎ:いや蚊取り線香だけ


白ちゃん:ここだけ切り取ると普通に聞こえるのよね


ひいろ:この時期にあさぎの部屋に入るのは一苦労だな


あさぎ:そうだね

あさぎ:モーラさん来るたびにいちいち燻さないとだから


きはだ:お隣さん燻製で草ァ!


ひいろ:しかも葬儀場の香りだもんな


あさぎ:あ、ちょっと待って蚊が


ひいろ:本日の犠牲者が


きはだ:子育てしようとしただけなのに


白ちゃん:検挙率100%の腕の見どころね


あさぎ:仕留めた


ひいろ:早いな


あさぎ:画像いる?


白ちゃん:いらない


きはだ:死因は?


あさぎ:圧死


ひいろ:結局自分で手を下すんだな


あさぎ:生き甲斐


白ちゃん:カウンセリング室予約しておきましょうか?


あさぎ:あそこすぐ虫入ってくるから嫌です


ひいろ:ブレないなぁ

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ