おまけ 過去のオカルト調査①
これは嘉月がまだオリジナル武器を開発する以前に、オカルト関連の調査に向かったときの話である。
嘉月は、今日も教授としての仕事に追われていた。少し時間が経ち、今日の仕事を終えた夢美は、家に帰り自分の研究をしようと手早く荷物をまとめていた。
そんなとき、嘉月の元に川村博士から電話がかかってきた。川村博士は大のオカルト好きで、嘉月にオカルト関連の情報を提供してくれている。
そういうわけで、嘉月は直ぐに電話に出た。
「もしもーし、博士どうしたのぉ?」
「君が興味を持っていた栗国島で、先ほどオーパーツが見つかったそうだ。現場はそのままにしてもらってるよ」
「本当に! ありがとぉ、直ぐ行ってくるねぇ」
嘉月はそう言って電話を切った。
「早速飛行機の予約しよっと。明日の講義は……休講にしちゃえ!」
嘉月は諸々の手続きを直ぐに済ませ、直ぐに空港へと向かった。
嘉月は飛行機の中で改めて、栗国島の資料を読み返していた。
栗国島は、人口は700人ほどの小さな島だ。嘉月がその島に興味を持った理由は、その島の歴史にあった。
昔、その島は僧侶の流刑の地であり、流刑となった僧侶は、その島にある洞窟でお経をあげて過ごしたそうだ。そして僧侶の中には、わざわざ自ら島にわたり、死ぬまで洞窟でお経をあげ続けたという者もいた。
嘉月はそれの歴史からある推測をしていた。もしかしたら、その洞窟には何かあったのではないか。流刑というのは名目であり、本当は洞窟でお経を上げ続けないといけない理由があったのではないか。
その上で、お経をあげるということは、何かの強い感情を鎮めているのかもしれないと嘉月は考えた。
そして今回、オーパーツが見つかったのも、その洞窟の中でのことだった。
飛行機を降りた嘉月は、空港の近くでホテルを取った。島へのフェリーは、1日一便しかないからだ。
嘉月は、ホテルの部屋でリュックを下ろした。そして持ってきた荷物のうち、博士からもらった機器のメンテナンスを行い、その日は眠りについた。
次の日、嘉月は船着場からフェリーに乗り、栗国島へと到着した。
嘉月は島での唯一の宿を取ると、その足で、観音堂へと向かった。
そこには見るからに僧侶の見た目をした三十歳くらいの男が立っていた。
「あ! 僧侶さんですよね?」
「はい。あなたが、宮野教授ですね」
「そうなんです! 今日はよろしくぅ」
嘉月は軽く頭を下げた。
この男は、栗国村に住んでいる僧侶だ。現地調査をするにあたり、嘉月が先に協力を依頼していたのだ。
「学者が洞窟を調査すると聞いていましたから、てっきり私どもの意向など無視されるものと思っておりました」
「そんなことないよぉ! 私は、そんな連中みたいに頭かたくないしぃ、それに、そっち方面の専門家の力が必要になるかも知れないし」
世間一般的に、科学のための調査となれば、地元民の信仰や思いなどは無視され、その場所は完全に閉鎖される。
しかし、嘉月はオカルトの根源は人の心にあると考えている。どうして、それに一番詳しい地元民とコンタクトもとらずに調査をできようか。
「では、早速島を案内しますよ」
「あ、その前にぃ」
嘉月は僧侶を呼び止めた。
「単刀直入に聞くんだけど……洞窟に何かとんでもないものでも隠してる?」
僧侶は少しの沈黙の後に尋ね返した。
「……なぜそう思うのですか?」
「私の研究の過程で得られた知識、それにこの島の歴史から見ても、洞窟に何かあるのは明らかでしょ」
「ということは、オーパーツではなく、そっちが本命だと」
「そう! でも、島の人たちの信仰や考えを踏み躙るつもりはないし、できれば迷惑はかけたくない。だから、そのためにも知ってること教えてくれない?」
嘉月がそう言うと、僧侶は口を開いた。
「実は私もよくわからないのです。ですが、洞窟に関わる話は結構あります。そして、唯一村長は洞窟に過剰反応するのです。今回の調査も村長だけは、頑なに反対していましたから」
「ふーん。それは興味深いねぇ」
そうして、洞窟に向かう前に、嘉月は僧侶に島を案内してもらう約束だったが、追加で洞窟にまつわる場所も案内してもらえることになった。嘉月は、メガネを取り出してかけた。
嘉月は観光名所として挙げられているような有名な場所以外に、地元民しかしからない場所にも案内してもらった。
例えば、森の中にある小さな石の塔だ。見た目は、石を膝の高さまで乱雑に積まれており、触ったら直ぐに崩れそうだ。これは、何かを鎮めるために作られたそうだが、具体的な理由は不明である。他にも後何箇所か同様のものがあるらしい。
そういった場所を見て周り、最後に島の資料館に立ち寄った。嘉月は僧侶と共に、洞窟に関する資料を漁った。
嘉月は資料をパラパラとめくっていった。
「うん。これで大丈夫!」
「え、もう読み終えたのですか?」
「ううん、これでスキャンしたから」
嘉月はメガネをトントンとさわりながらそう言った。
「ハイテクなのですね」
「今の時代普通だよ」
そうして、嘉月と僧侶は本命である洞窟へと向かった。
嘉月達は早速洞窟の中を進んで行った。洞窟の中は綺麗な鍾乳洞になっており、途中までは観光用の道が用意されている。しかし、道より先にも洞窟は続いており、オーパーツが見つかったのは一番奥だ。
「あ、ちょっと待ってね」
道の途切れるところまで来たところで、嘉月はリュックを下ろし、何やら大きな機械を取り出し、右腕に装着した。
「それは、何なのです?」
「私の秘密兵器。襲われたときのためのね」
それは、嘉月理論が取り入れられた、嘉月オリジナルの武器の試作品である。試作品なので、まだ軽量化には成功していない。
その機械を通じ、心のエネルギーを取り出し、外部に放出することができる。嘉月の希望で、単純にエネルギーを変換するだけでなく、ビームサーベルのような武器にすることも可能となっている。
ライトがわりにすることもできるが、心のエネルギーには限界があるので、普通にライトで照らしながら奥へと進んだ。
そして、頑張って歩いているうちに、洞窟の一番奥へと辿り着いた。
そこは大きな壁のようになった行き止まりとなっていた。
そしてその直ぐ目の前に、報告を受けていたオーパーツと思われるものが落ちていた。
それは、何かの模様が入っており、よくわからない破片のようなものだ。
嘉月はそれを手に取ってじっくり観察した。
「これは、今の技術で作られたものでもないし、昔のものでもない。何だろぉ、初めて見る質感」
「私にもわかりません。昨日になって突然現れたのです」
「誰かが持ち込んだ可能性は?」
「ないと思いますよ。島の人はそんなことしませんし、ここ最近は入島してくる人もいませんでしたから」
嘉月は少し考え込んだ。すると、嘉月は別のメガネを取り出した。メガネのグラスには薄い緑色ががかかっている。
嘉月はそれを装着し、行き止まりの壁の方をしばらく見つめた。
「何をしてるんです?」
「……うん! ビンゴ! やっぱり奥に何かある!」
嘉月はそのまま、壁のある箇所に手を触れた。そして、そこに自分の心のエネルギーを変換したものを流し込んだ。
すると、壁がいきなり音を立てて動き出し、地下への階段が現れた。
僧侶は大変驚いた様子で、口が開いたままであった。
「あ……え……こんなものが……」
「ふふん! よし、じゃあ行こっかぁ!」
嘉月は僧侶を連れて意気揚々と降りたいった。