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竜王はワシじゃろ?  作者: 阿弥陀乃トンマージ
第一章

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第4話(3)ギョーザと風林火山

「す、すごいね、竜子、2連勝だよ!」

 太郎が興奮気味にママに話しかける。

「ええ、そうね」

「初めての大会だというのに、緊張した様子もないな……良い滑り出しだ」

 パパがうんうんと頷く。

「それでは、Hブロック、第三局の開始です」

「またまた後手かの……」

 竜子が鼻の頭をこする。

「お願いします」

「あ、お願いします……」

 竜子が対局者に頭を下げる。

「……2連勝とは調子が良いみたいね」

「……どうも」

「見たところ、大会は初めて?」

「そうじゃな」

「やっぱり……」

「どうしてそう思ったんじゃ?」

「……駒の持ち方」

「え?」

「少したどたどしいから」

「ふっ、まだまだ慣れてはおらんの……」

「この大会に出てくるのに……ちょっと意外ね」

「主に将棋バトルの方ばっかりじゃったからの……」

 竜子がスマホを操作する振りをする。

「ああ、そういうこと……」

 対局者が頷く。

「納得いったかの?」

「ええ、負けられないってこともね」

「は?」

「駒もろくに触ったことのない子には負けられないわ」

「……駒を沢山触った方が良いのかの?」

「それはそうでしょう。経験が全然違うわ」

「ほう……それはそれは!」

「むっ⁉」

 竜子の鋭い一手に相手の目の色が変わる。竜子が笑みを浮かべる。

「どうかのう?」

「くっ!」

「ほい!」

「ちっ!」

「それ!」

「……『宇都宮の鈴木』と呼ばれたあたしをここまで追い詰めるなんて……」

「また沢山いそうな異名じゃな……」

「……ただ、まだこれからよ?」

「なに?」

「『宇都宮ギョーザ』のように包み込んであげるわ……!」

「もはやゲームですらなくなったの……」

「え?」

「いやいや、こちらの話じゃ……」

「と、とにかく、勝負はここからよ……!」

「⁉」

「……」

「………」

「………負けました」

「はい、こちらは将野さんの勝ち。将野さん、3勝目です」

「……包み込まれそうになったが、その前になんとか包囲網を打ち破れたの……」

 その後、竜子たちは席を移動する。少しの休憩時間を置いてから係員が告げる。

「それでは、Hブロック、第四局の開始です」

「またまたまた後手か……」

 竜子が苦笑する。

「お願いします……」

「あ、お願いします……」

 竜子が対局者に頭を下げる。しばらくして対局者が口を開く。

「……調子が良いみたいね」

「……おかげさまで」

「ただ、あなたの連勝もここまでよ」

「うん?」

「このわたし、『甲府の伊藤』の前にあなたは敗れる……!」

「またしても一杯いそうな異名じゃな……そういうやつしかおらんのか?」

 伊藤と名乗った対局者を竜子は冷ややかに見つめる。

「決勝トーナメントに向けて、落とせない一局……『風林火山』戦法で行くわ!」

「ふ、風林火山戦法じゃと⁉ こ、こけおどしじゃ!」

「ふっ、試してみたらどう?」

「ふん!」

「ふふっ……」

「か、堅い守りじゃな……!」

「『山のように動かず』……不動の守備よ」

「くっ……なんとかペースを……」

「ふふふっ……」

「ペースを掴めん……!」

「『林のように静かに』……慌てないことが大事よ……と言いつつ!」

「! ペースが変わっただと!」

「『風のように素早く』……チャンスと見たら一気に……!」

「‼ むうう……」

「『火のように侵略する』……さあ、追い詰めてきたわよ?」

「……風林火山には続きがあるんじゃぞ?」

「え……?」

「それ……!」

 竜子の一手に伊藤が驚く。

「こ、この手は⁉ ど、どこから飛び出したの⁉」

「『陰のように悟られず』……相手に知られてはならんからな」

「くっ……!」

「『雷のように激しく』……好機は逃さない……!」

「ちっ……!」

「……」

「……ま、負けました……」

「はい、こちらは将野さんの勝ち。将野さん、4勝目です」

 係員が確認して告げる。

「ふう……相手の変化にも落ち着いて対処することが出来たの……」

 竜子は一息つきながら席を移動する。これで4連勝である。

お読み頂いてありがとうございます。

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