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竜王はワシじゃろ?  作者: 阿弥陀乃トンマージ
第一章

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第4話(2)オセロとかるた

「そこの方、大声を出さないでください……!」

「むっ……」

「くすくす……」

 係員に注意された竜子がばつが悪そうな顔をする。周囲からはくすくす笑いが起きる。

「ちっ……」

「ふふっ、見かけない顔だけど……大会は初めて?」

「うん?」

 竜子の対局者が話しかけてくる。

「どうなの?」

「ああ、初めてじゃ」

「ふふっ、道理で……」

「なんじゃ?」

「緊張しているんでしょう?」

「は?」

「みなまで言わなくても分かるわよ。緊張を紛らわせる為にそうやって大声を出したんでしょう? あたしも最初の内はそうだった……」

「……」

 竜子が対局者をじっと見つめる。

「なに?」

 対局者が首を傾げる。

「いや、お主、大声を出していたのか……変なやつじゃな」

「なっ⁉ フォ、フォローしてあげたのに、なんて言い草!」

「そこ! うるさいですよ! 他の対局者の方に迷惑です……!」

 係員が注意する。

「むっ……!」

「注意されてしまったのう……」

 竜子がいたずらっぽく笑う。

「だ、誰のせいで……!」

 対局者が竜子のことを睨む。

「対局に集中しようではないか」

「い、言われなくても……!」

「むっ……」

 対局者が鋭い一手を指す。

「見事な一手でしょう?」

「うむ……」

「『水戸の佐藤』とはあたしのことよ」

「……一杯いそうじゃな」

 竜子が佐藤と名乗った対局者を冷ややかな目で見つめる。

「……あたしを舐めていない?」

「尊敬する材料が今のところないからのう……」

「ふっ、これは決勝トーナメントまで温存しておこうと思ったのだけれど……」

「ん?」

「大事な初戦だし、少しは慣らしておいた方がいいわね……」

「うん?」

「知っている? 水戸は『オセロ』発祥の地なのよ」

「……何を言っておる?」

 竜子が首を傾げる。佐藤がフッと笑う。

「オセロのように挟んでひっくり返すような指しまわしをとくと味わいなさい……!」

「!」

「………」

「…………」

「…………負けました」

 佐藤が頭を下げる。係員が確認する。

「……はい、こちらは将野さんの勝ち。将野さん、一勝目ですね」

「な、なんだったんじゃ……」

 竜子が戸惑い気味に呟く。その後、竜子と他の参加者は席を移動する。少しの休憩時間を置いてから係員が告げる。

「それでは、Hブロック、第二局の開始です」

「ふん、また後手か……」

「お願いします……」

「あ、お、お願いします……」

 竜子が対局者に頭を下げる。しばらくして対局者が口を開く。

「あなた、さっき……竜王がどうとか言っていたわね……」

「ああ、言ったのう……」

「随分と威勢のいいことね。もっともそれだけが取り柄なのでしょうけど」

「なんじゃと?」

「『水戸の斉藤』さんを倒したくらいで調子に乗らないことね」

「……佐藤じゃろ?」

「……………」

「そこは間違えてはいかんじゃろ……」

「と、とにかく……!」

「あ、ごまかした……」

「この『前橋の高橋』の相手ではないわ……!」

「むう……」

「ふふっ、恐れをなしたかしら?」

「いや、そもそも知らんからのう……」

「なっ⁉ 他に感想はないの?」

「前橋に高橋さんは一杯いそうじゃなってことと……」

「ことと?」

「同じ字が二つもある異名はなんかいまいちじゃなっと……」

「な、なんですって⁉」

 高橋がムッとする。竜子が笑みを浮かべる。

「気に障ったかの?」

「ふん、こういうときこそ平常心が大事なのよ……!」

 高橋が良い手を指す。竜子が顎をさする。

「ほう、やるのう……」

「……『上毛かるた』って知っている?」

「は? じょうもう?」

「群馬県で盛んなかるたよ。わたしは幼いころからそのかるたに親しんできた……」

「それがどうした?」

「そのかるたで培った、『読み方』と『取り方』を遺憾なく発揮させてもらうわ!」

「‼」

「…………………」

「……………………」

「…………………負けました」

「はい、こちらは将野さんの勝ち。将野さん、2勝目です」

 係員が確認して告げる。

「な、なんだったんじゃ……」

 竜子はやや唖然としながら、席を移動する。これで2連勝である。

お読み頂いてありがとうございます。

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