対峙
「いやはやいやはや、本当に熱心な方ですね! 他の兄弟姉妹は落ち込んで家でぐったりしているというのに、あなただけはこの広大な山のどこかに眠るお宝を見つけるべく、深夜にもかかわらずせっせと捜索を続けるなんて! 流石は御父上を殺しただけのことはありますね!」
「っ!?」
暗い山の中。自身を起点としていた唯一の光源に、別の光が重なる。
声から相手が誰かは分かっていた。しかしここにいることは完全に想定外。まして、今の発言は聞き逃すことができるはずもない。
肩にかけていた大きなシャベルを手に持ち、声のした方へゆっくり振り返る。
相手の持つライトのおかげで、こちらが照らすまでもなく顔をはっきりと視認できる。
日本人離れした長身に、気味の悪い薄ら笑顔を張り付けた、事件の元凶――佐久間喜一郎がそこにいた。
――殺せるだろうか?
シャベルを持つ手に力が込められる。
相手は男。筋肉質な感じはしないが背は高く、自分より遥かに力があるのは間違いない。
しかも今ここにいるということは、何か企んでいるのも間違いない。
復讐か、脅迫か。
不意を突いて襲わず、声をかけてきたということはおそらく後者。であれば、隙を突いて殺すチャンスがきっとある。
油断を誘うため、あえて持っていたシャベルを投げ捨てる。
そんな私を見て、佐久間は、満面の笑みを浮かべ大きく手を叩いた。
「ああ良かった! 急にシャベルを持たれたものですからてっきり襲われるのかと思いましたが、話し合いをしていただく気になったのですね! それでは、改めて。
私めの虎の子の一品『お金の咲く木の苗』のすぐそばで文義様を殺した真犯人様。文義様の黄泉への旅路を舗装するため、少しお話をしようではありませんか!」