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詐欺師佐久間の骨董販売奇譚  作者: 天草一樹
Episode1:お金の咲く木の苗
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気まずい沈黙

 村唯一の駐在と医師、そして噂を聞きつけやって来た村の人々。

 まだ早朝にもかかわらず、突如として人で溢れた水嶋邸はしばらく機能不全に陥った。

 目的の人物だけでなく大勢人を連れて戻ってきた和彦さんと竜也さんに、アカリさんが怒気のこもった文句をぶつける。

 男どもはたじたじになりながら言い訳をしているが、ぶっちゃけもう遅い。現場保存の観念など皆無の村人及び駐在は、庭に残っていた貴重な足跡を見事なまでに踏み荒らし。文義さんの死体とその上に積み上げられた札束の山を見てお祭り状態に移行した。

 俺とアカリさんが大声を上げ場を鎮めようとするも、パニックに陥った村人たちは騒ぐのを止めない。

 いつの間にか佐久間さんも相澤さんも姿を消しており、アカリさん以外の水嶋家の人々も、場を収束させようとするどころかどさくさに紛れてお札をちょろまかしていた。

 一向に騒ぎは収まる気配がなく、このままではまずい、と本気で危機感を覚えた頃。

 喧騒をかき消すほどの爆発音が轟いた。

 庭にいる全員が驚きから口を噤み、腰を抜かし座り込む者すら出る中。爆音の発生源に無表情で佇んでいた相澤さんが、

「取り敢えず、全員その場に正座しなさい」

 と命令することで、ひとまず喧騒は終結を迎えた。

 そこからは相澤さんとアカリさんの指示の元、関係ない村人たちを屋敷から追い出し。

 気絶していた西村駐在を起こし、これまでの経緯を伝えて本部に応援を呼ぶよう指示。

 上方医師には文義さんの検視をお願いし、ざっくりとした死因と死亡推定時刻を出してもらった。

 辺境とも呼べる山奥の村であることから、警察が到着するまでには数時間がかかるとのこと。その間、駐在立ち合いの元、山積みの札束を回収――正確な額はわからないがざっと一億円程度の札束であることが確認された。さらに文義さんの遺体を屋敷の一室へと運んだ後、一同は大広間で待機することとなった。

 沈鬱、というよりもひたすらに気まずい空気に包まれた大広間。

 殺人犯かどうかはともかく、事件の発端に関与している俺はとにかく肩身が狭い。佐久間さんと相澤さんはふてぶてしい態度で、そこら辺一切気にかけた様子がないことから、なおのこと申し訳なさが募ってくる。

 ただまあ、既に事態は俺たちがいなくなるだけでどうこうなる状況ではなかった。

 落ち着いたタイミングでアカリさんが、和彦さんと竜也さんに昨晩文義さんと何を話したか尋ねるも、当然のように黙秘され。兄姉全員が文義さんに会いに行ったことは認めるも、そこでの会話は一切漏らさない徹底ぶりを披露することになった。

 声を荒げる事こそなかったものの、アカリさんは完全に怒り心頭の様子。

 和彦さんたちも、自分たちの対応が異常なことは理解しているのか、これと言って文句を言ったりはしてこない。それでも、一番下の妹に一方的にこき使われたことは不服なようで、皆不愉快そうに顔をしかめていた。

 そんな子供たちをどう見ているのか、昭子さんは相変わらず悲しげな表情で俯いたまま何も言わない。

 結果として、全員がうちに不満や不安を溜めて我慢している状況に。時間と共により気まずい空気が熟成されていった。

 ――まだあと一時間以上、この空気の中待機しないといけないのか。

 憂鬱な気持ちで天井を見上げる。こういう時こそ、空気を読まない佐久間さんが適当な話題を振ってくれないかなと目を向けてみる。俺の視線を敏感に察知したのか、ちょうどこちらを振り向いた佐久間さんは、なぜか満面の笑みで頷いてきた。

 ――これは、余計なスイッチを押してしまったか?

 そんな不安が込み上げると同時に、佐久間さんはその場ですくっと立ち上がり、

「さて皆さま! こうしてただ黙っているのも退屈ですので、文義様を殺した犯人を暴いてしまおうではありませんか!」

 と宣言した。


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