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宿

 ベルデの街はダルディの言った通り寂れていた。そもそもこの街は王都から迷宮都市への中継地点に過ぎない。


 消耗品を買い込んで一泊。そして後にする。そんな扱いの街に思えた。


 だから宿は充実しているものの、その他の施設は申し訳程度にあるだけだ。


「お嬢さん達、ここが一番マシな宿だ」


 ダルディが通りに面した大きめの宿を指差す。なるほど、確かに立派な構えをしている。ここならば貴族令嬢が泊まってもおかしくないだろう。


「ありがとうございます。これはお礼です」


 荷馬車から降りたロラが包みをダルディに渡した。


「アルスさん、本当にありがとうございました!」


 ソレイユが俺の側にきた。ロラと同じく包みを持っている。この金で抱いて欲しいということだろうか?


「金なんて必要ない。そんなに卑下するな。俺もこの宿に泊まるから今晩訪ねてくるがいい」


 ソレイユはポカンとしている。


「はぁ……」と溜め息をついたロラがソレイユの手を引いて宿へと入っていった。どうやらロラは俺のことを諦めたらしい。二人で俺を取り合って喧嘩するされるよりは、気が楽ではある。


「アルス! 俺は馬車を停めてくるから、宿を取っておいてくれ! 後で酒場で一杯やろうぜ!!」


 通りに声を響かせながらダルディは宿の裏へと消えていった。


 勢いよく宿の扉を開けると若い男と目が合う。


「二部屋空いているか? 一泊なのだが」


「悪いな。俺は冒険者だ。宿の人間に言ってくれ」


「……すまない」


 そうだったのか。こちらを見たからてっきり宿側の人間かと思ってしまった。失態だ。


「お客様。受け付けはこちらですよ?」


 すかさず、若い女が声を掛けてきた。怪しいな。


「貴様、何者だ……!?」


「えっ、この宿の受付ですけど……」


「ほぉ。証拠はあるのか?」


「証拠……ですか……」


 女は黙り込む。ふん。やはり偽物だったか。俺を騙そうとしても──。


「アルス! 何やってんだよ!! 受付に絡むな!!」


 ダルディがカウンターに金を置いて「二部屋頼む。一泊だ」と投げやりに言い、鍵を受け取る。


「ほらっ! さっさと飲みに行くぞ! 俺は飲みたくて仕方ないんだ!!」


 鍵を押し付けられ、ダルディに続いて階段を登る。


「金はいいのか?」


「貴族様にたっぷり礼を貰ったからな! 俺の奢りだ! 気にすんな! 荷物を置いたらすぐ出てこいよ」


 受け取った鍵を鍵穴に突っ込むがひどく硬い。錆びついているのか?


「アルス……お前の部屋はこっちだよ……」


「あぁ。通りで鍵が合わないとおもったよ」


「はぁ……。剣を握れば恐ろしく強いのに……この男はなんで……」


「ダルディ。疲れていないか?」


「おめーのせいだよ!!」


 何故だか怒られた。

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