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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

空っぽのトーク画面

作者: 枕木

中学2年の冬



「ごめんね。」


その日僕の恋は終わった。



最初の出会いは小学校だった。

第1印象はよく笑う明るい子、スポーツも得意で特に走るのが好きだった。


まだ幼かった自分は可愛いとは思っていた。

だけど好きという感情までは抱いていなかった。


偶然にも6年間クラスが一緒だった。

すごく仲が良かった訳では無いけど、毎日挨拶はするし会話も普通にするくらいの間柄。


君は何とも思ってなかったかもしれないけど、その頃からか君によく目が行くようになった。



中学に入りクラスは別々に。


お互い部活にも入り、走るのが好きな君は陸上部に入った。

あまり話すことも少なくなったけど、廊下で見かける度に目で追うようになり好きなんだと気づいた。


そして中学2年の冬、


中学生の悪ノリのようなもの。

周りにそそのかされて君に告白した。

勢いで告白したが気持ちは真剣。


ひと言「ごめんね。」


何となく結果は分かっていた。

だから悲しくないと言えば嘘になるけどそこまで未練も無かった。


時はあっという間に過ぎ、卒業式。

お互いに別々の高校に行くことは決まっていた。

何となくこのまま終わるのも嫌で君の連絡先だけは何とか聞くことができた。


高校は部活に忙しく、君のことはほとんど忘れていたし心のどこかで楽しくやっているだろうと勝手に思っていた。


そんな時だった。


高3の春。

君が少し心を病んでしまったと風の噂で流れてきた。


最初はそんな訳ないと思った。

僕の記憶にある君はいつも明るく元気だったから。


でも、ふと気になった。


中学の時もクラスで少し浮いている。と聞いたことがあったからだ。

その時は姿も見れたし、友達と笑顔で話している姿も見れたからそんなに気にはしていなかった。




連絡してみようかとも思ったけど、高校以来連絡はしていないし、過去に振った男から連絡が来るなんて気持ち悪いだろうと思ってやめた。



高校卒業後、僕は地元で就職した。


仕事は忙しく、覚える事も沢山あった。

新しい出会いも沢山あり彼女も出来た。


忙しい中でまた君の噂を聞いた。


あの子病んで大学を辞めたらしいぞ。


あ然とした。

前はあんなに明るかった君が本当に病んでしまうなんて。


本気で連絡しようか考えた。

何度も文章を考えたけど、結局送ることは出来なかった。


今更何て声をかければいいんだ。対して親しい訳でもない。全然連絡を取ってない俺の所まで噂が聞こえてくるぐらいだ、もう親しい奴らが連絡をとっているだろう。


そんな気持ちからだった。


1年後に君が別の専門学校に通っているときいた。

少し救われた気がしたし安心もした。




数年の月日が経ち、僕はだいぶ大人になった。

結婚もしたし、妻のお腹には僕達の子供がいる。

幸せを感じ、君のことはすっかり頭になかった。








ある夏の日だった。

君が自殺したことを知った。

それも2年前に、



言葉が出なかった。





何で死ぬなんて選択肢を選んだんだ

何で君が死ななくちゃいけなかったんだ

何が君をそこまで追い詰めたんだ


そんなことばかりが頭の中を駆け巡った。







少し落ち着き、煙草に火をつけた

煙をゆっくりと吐きながらふと考えてしまう。





高校の時、連絡を送ってれば何か変わったのか。


君が病んだと聞いて飲みにでも誘ってみてたら結末は変わったのだろうか。


そんな無意味なことを考えてはやめる。



分かっている、全て偽善だと


自分に酔っているだけかもしれないと



だけどそれでも良かった。

少しの救いが欲しかった。


別に僕に関わって生きて欲しいなんて思わない。

仲間と飲んだ時に、

あいつ結婚したらしいぜ

そんな話が聞けるだけで良かった。


君が元気に過ごしているそんなことが風の噂で流れてくる程度で良かった。



そんなことを思いながらため息とともに煙を吐く。


携帯を開いてみるも


そこにあるのは何もない空っぽのトーク画面だけだった。

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