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推理作家と呼ばれた詩人

作者: なか0よし0

千八百九年、一月十九日に産まれた彼は文筆のみを生業として生計をたてようとした最初の作家であった。


彼の両親は旅役者であったが、その父は失踪し、母と死別したのは幼い頃の事だった。

そして、ジョン・アランの養子となり、以後アラン性を名乗ることになる。


バージニア大学に入学して恋をした。

エルマイラ・ロイスターという女性だったが彼女の身内に反対され、彼女は別の男と結婚させられた。

その後、寄宿舎でギャンブルを覚えた彼は借金まみれになり中退、勘当されアメリカ陸軍に入隊したが、二年後には父方の叔母であるクレム婦人のもとに身をよせていた。

生活苦の中、婦人の娘で十四歳のヴァージニアと結婚した。

二十七歳のことだ。

教会には彼女を二十一歳の成人と偽っての結婚。

ヴァージニアは幼くして肺結核を患っていた。

その事から、彼はアルコールに依存するようになっていた。


千八百三十五年、リッチモンドで、サザン・リテラリー・メッセージャー誌で編集に携わっていたが、 週給十ドルと生活は苦しかった。

辛口の書評で発刊は十倍になるが、アルコール依存をとがめられ仕事を辞めた。


「わたくし、ルーファス・グリズウォールドと申しまして、ポー氏の遺産相続代理人を任されているものでして」

と彼の死後、クレム婦人に近寄った男は、彼の元同僚であり、生涯の仇敵だった。


クレム婦人は、賄い付きの下宿をしていたが千八百三十八年夏から四十四年の春までフィラデルフィアで過ごしていた。


「あの人は一人で考えるのが好きでした。

マウントトムの岩山に座っていたり、三階の屋根裏部屋で本を書いたり、オーギュスト・デュパンは彼の憧れの境遇だったのかもしれません」


グレアムズ・マガジンで「モルグ街の殺人」を発表した頃の彼は、生涯で最も高い収入である年俸八百ドルを受け取っていた。


二十四歳から三十八歳までの十四年間で、彼は推理小説百年の大系を作りあげる。


実際あった事件、暗号、鑑識、不可能興味(インポッシブルクライム)消去法(エルミネーション)、犯人の意外性の発動、探偵役の犯人、盲点原理の使用を書き上げた。


すべては家族の安定と幸福のために。


「自分の雑誌をもつのが夢なんです。

雑誌の名前も決めています。

ペン・マガジン。

私にとって、妻と義母は決して裏切らない唯一の家族なんです。

私には二人を守る使命がある。

たとえ、死んで、この身が滅んだ後だとしても。」


千八百四十四年、フィラデルフィアからニューヨークに移住。

ブロードウェイ・ジャーナルに職場を移しユリイカの完成に精力をそそいでいた。


千八百四十七年、ブロンクスにある木造部屋でヴァージニアは貧苦の中、息を引き取った。


その二年後、仕事のために戻ったリッチモンドで学生時代の恋人で未亡人となっていたエルマイラ・ロイスターと再会し、求婚、婚約していた。



十月に結婚式を控えた彼は自分の選集の出版準備を始め、それに関してルーファス・グリズウォールドの協力を得るために、久しぶりにニューヨークに戻ることにした。

二十七日にリッチモンドを出発し、船旅の後にボルティモアに着くと、数日滞在。

メリーランド州議会選挙の中、彼はライアン区第四投票所にあたる「グース・サージャンツ酒場」にて異常な泥酔状態に陥っているところを旧知の文学者にたまたま発見され、ただちにワシントン・カレッジ病院に担ぎ込まれたが、四日間の危篤状態が続いたのち、千八百四十九年十月七日早朝五時に亡くなった。


彼は選挙の立候補者に雇われたならず者により、アルコールと麻薬で意識を朦朧としている所を投票所をつれまわされて、最後に使い物にならなくなって、捨てられたのではないか、だからサイズの違う服を着ていたのだと言われるような不審死を遂げた。


彼の死後、遺産相続代理人を騙ったルーファス・グリズウォールドによって、

すべてを失うクレム婦人。


彼は結局、家族に何も遺すことは出来なかった。


また、ルーファス・グリズウォールドは作り話を丁稚あげ、彼の悪名をのこしていった。

アルコール依存、借金王、性的不能者、神経質、変人・・・


ポーを熱愛できるということは幼稚な思考段階にある証拠であり、未熟な子供と不健全な大人のための詩人である等と評され、彼は生涯、母国では認められなかったが、海をこえては評価され、文学上、もっとも偉大な英雄の一人になったのである。


彼の人生は、その死因さえもミステリーとされているが、彼は自分の願望を叶えることは、ついに出来ずに殺された詩人である事に拘り続けた作家であった。





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