怖い事
本当に怖い事なんだ
一般的に善人と言われる普通の人間が何かの拍子で全くの別人のようになってしまう
その人自身にも制御の難しい力が働いて、違う顔が覗く
悪魔に取り憑かれた、とかソレを見た周囲の人がそう形容する気持ちも分からないでもない
だって、まさかあんなに優しいあの人が…
って思ってしまうんだろうね
あの人がこんな事するはずがない、誰だったんだ、あれは
もしかしたら、これがドッペルゲンガーの正体なのかもしれない
つまりは、通常とは違うあなた
恐ろしいのは、それが通常のあなたの正しさに合わない行為だった場合
幾ら言い訳をしようが、あなたがそれをした事に変わりはないんだ
幾ら嘆こうが、あなたにあなたを憐れむ権利はない
僕もそれをしたあなたを決して許さない
誰かに赦しを請うなんて許される行為じゃない
この世の恐ろしい側面で、それは基本的に一方通行である事、不可逆である事
あなたが僕を殺せば、僕はそれからずっと死んだまま
あなたは僕を殺したせいで、その両の手についた赤い染みを洗い流さなきゃと永遠にもがく事となる
そんな顔しないでくれ
僕は、僕がこんな事を言うのは、あなたが本当はそんな人じゃないと知っているからなんだ
口にも出したくない人種がいる
思い浮かべるのも不快な胸糞の最悪なのが
掌に赤い三日月の跡が4つ並んで、全身が硬直のし過ぎで震え出した
ぎりぎりと音を立てて噛み締めた奥歯はいつかは欠け落ちる
僕の利己的な思想でこいつらが全員いなくなってしまえばと思うそのそのソレ達
あなたはソレとは違うと僕は知っている
だから、僕は怖いんだ
つまり、あなたは僕なんだ
僕は他人を害したくない
傷つけてしまうくらいならもう関わりたくない
けれど、結局僕は1人ではいられなかった
結局、誰かに声を掛けてしまった
話を聞いてほしいと言ってしまった
話を聞かせてほしいと言ってしまった
これだってそうだ
何を思ったって、泣いたって、1人でやってればいいのに、わざわざ僕は他人に胸の内を理解してもらえるよう文章にし、それを人の目に晒している
しかも、もしかしたら誰かを傷つけるかもしれない言葉を
いつか、僕の中の何かが何かの拍子で目を開けて誰かを傷つけるその瞬間が訪れてしまうのではないか
あなたにもその可能性があるなら、同じくらい僕にもその危険性がある
自分とは思えないような思考、言動を犯す危険性が
しかも、大抵の場合その時にはその意識が無いんだ
後になって、なんであんな事をしてしまったんだと苛まれる
それがどれほど恐ろしいことか
懺悔など何の価値も無いと知るそれが、もう戻らない過去に手を伸ばしてしまう無意味さ
本当に怖くて仕方ないんだ
僕は自分を臆病者だと知っているけど、それでもこれはどうすればいいかも分からなくてもっと怖い
対策のしようがない
念のために、積極的に自分から人と関わるのはやめたけどーーまあ、もともと非社交的だから難しくないーーそれでも充分とはいえない
というより、それすら危険なんだ
僕は自分が何かをするのも怖いけど、何もしなかった、となるのも怖い
究極の怖がりだ
もしも、なんとかする方法があるのなら教えてほしいよ
死ねば?とか、そういうのじゃなくて僕が生きていてもそれを免れる方法ってやつを
こんな話して、もしもあなたを怯えさせたらごめんなさい
ほら、やっぱり僕は最低だ
でも、怖くてしょうがなくて誰かにこの恐怖を共有して欲しかった
結構、勝手だね僕って奴は