エルフの里の復興を手伝おうか
デザートポプラの根で囲われたエルフの里内からモンスターが狩り尽くされて1日、避難していたエルフたちはようやくそれぞれの家に帰ることができるようになった。
「ラナテュール、久しぶりだな。帰ってきてくれて本当に助かったよ」
「いままでごめんなさい。ハーフエルフだからといって、俺たち……」
「今回の一連の騒動でラナテュールがどれだけ大切な存在かがよく分かったわ。これまで本当にありがとう!」
議事堂で1人休んでいた私に、多くのエルフたちが声をかけてきた。どうやら里内での私の評価は植物研究狂いのハーフエルフから多少は頼れるハーフエルフに昇格したらしい。
「まあ、いまさらだけどね。筆頭守護者も辞めちゃったしさ」
「そんなことないんじゃないかしら? きっとこれから変わることもあると思うわ」
私の呟きにいつの間にか隣に立っていたアウロラがほほ笑んで答える。
「みんなシーガル里長がトップであるいまの里に不満を抱いているわ。できることなら前里長──私の父の時代に戻りたいって」
「そんなことできるわけないじゃないか。彼はもう死んだんだ。同じ治世はもうやってこないよ」
「そうね。でも、それに近い時代を再び築き上げることはできるんじゃないかしら?」
「……? まあ、そりゃできるだろうけど……」
「あのね、ラーナ。実は多くのエルフはね、あなたに新しい里長になって欲しいと望んでいるのよ」
「えぇっ?」
「あなたならきっとこの里を再び良い方向へと導いてくれるんじゃないかって、みんなそう思っているの」
「いや、そんなこと言われてもな……」
「大丈夫よラーナ、なにがあっても私がサポートするから! まあもちろんすぐに心の整理ができるとも思っていないわ。返事はすぐでなくていいけど、考えておいてね」
それだけ言い残すとアウロラはどこかへ駆けて行ってしまう。モンスターに散々荒らされた里の復興に向けていろいろと忙しいらしい。
「ラ、ラナテュール様……いまのお話……」
「あ、リノン」
声の聞こえた方向へと振り返れば、リノンが少し離れたところに立ち尽くしていた。
「もし、もしこの里の里長になってしまったら……ラナテュール様は……」
「大丈夫。ならないよ。ちゃんと私たちの国に帰るって、ククイたちと約束もしたことだしね」
「そうですか……ホッとしました……」
私はそこまで薄情じゃないし、コロコロと心変わりする性質でもない。なんせ植物の研究をかれこれ200年以上続けているんだぞ?
「まあでも、帰りはするけど、それにしても里をこのままほったらかして帰るわけにもいかないから、復興の手伝いくらいはしていこうか。リノンは力仕事をお願いね。私は畑の再生とモンスターの侵入対策をするからさ」
「はいっ! 承知致しました!」
そういうわけで、私とリノンはそれからしばらくエルフの里で過ごすことになった。
農業エリアはやはりかなり荒らされていて、完璧な復興にはかなりの時間を要しそうだ。とりあえず当面の間みんなが飢えないように、一部の畑を集中的に再生して実りをもたらしておくことにする。あとはモンスター避けのバレラの木を、再び各農業エリアへと植えて育てた。
議事堂がある里の中央エリアは……まあ私がモンスターを串刺しにするために乱立させてデザートポプラの根の後始末が厄介だ。私のマナ操作で枯らしたものの、何百も突き立った根を切ってモンスターの死体ごと運んで燃やす作業は大変のひと言に尽きる。
またたく間に1週間の日々は過ぎていき、なんとか生活が安定する目途がついた頃。
私とリノン、そして里のエルフのみんながアウロラの呼びかけで議事堂前へと集結することになった。
「さてみなさま、里の復興のためお忙しい中お集まりいただきありがとうございます」
群衆の前に設置された台の上に立ち、アウロラが話し始める。
「いまだこの里は復興への道の途中であることは分かっておりますが、これから先の未来を歩いていくためにも、我々は過去のことがらへとケジメをつけなくてはなりません。それでは罪人を前へ!」
指示が飛ぶと、アウロラの配下らしきエルフたちによって、シーガル里長を始めとしたこれまで里の幹部だった者たちが手に縄をかけられて連れて来られた。
「この者たち、エルフの里に甚大な被害をもたらす政策をした一方で、里の予算を不当に横領した罪が明らかになりました。よってこの里より追放を言い渡すものとします。異論のある者は挙手を!」
その言葉に、誰も手を挙げるものはいなかった。当のシーガルたちは悲しそうな悔しそうな顔で俯くばかりだ。どうにもアウロラにガッチリ証拠を握られているらしい。
「では、この者たちの北の大地への追放を決定します。続けて、次の罪人についです」
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