森の巨人と話してみた
「森の巨人か……この近くの森にもいたんだね、知らなかったよ……」
「森の巨人……ラーナ、それっておとぎ話に出てくるような怪物じゃなかった……? ドラゴンと土地をめぐって争ったとかそんな話の……」
「うん、そうだね。私も初めて見たよ、実物は」
そうこう話している間にも、森の巨人は大きな歩幅でズシンズシンとこちらに向けて歩いてくる。
「ど、どうしましょう、ラナテュール様っ! アイツ、私の攻撃もあんまり効かないんですっ! すっごく硬くて!」
「私の動物たちの攻撃も効かなかったわ! オオゼキの突進も他の子たちの爪も牙も全然通じないのっ!」
「分かった分かった……とりあえず動きを封じちゃおうか」
私はデザートポプラの根を操って巨人の足を絡めとる。そしてそこからさらに根を伸ばし、胴体、腕とその身体の一切の自由を封じることにした。
「さて、森の巨人というからには人並みの知性があるはずなんだけど……」
伸ばした根に乗って、私は巨人の目線まで上がっていく。
「やあ、こんにちは」
〔……〕
「ちょっと話をしないかい?」
〔……〕
「無視? あのさ、ここは私たちエルフの里なんだ。無暗に入って来られていろいろ踏みつぶされるのは困るんだけど」
〔…… ココ ハ、 ワレラ ノ トチ ……〕
お、喋り始めた。でも……。
〔コノ モリ ヲ センキョ スル モノ スベテ ヲ フミツブス ……〕
「……それって話し合いには応じないってこと?」
〔ワレラ ハ ケシテ クッシナイ …… ワレラ ハ トリモドス コノ セカイ ノ ダイチ ヲ …… ソノヒ ガ クルマデ ワレラ ハ スベテ ヲ フミツブス ……〕
「はぁ……そうかい」
私は地上に降りる。2人がどうだった? と寄ってくるが、それには首を横に振って答えた。
話し合いは無理だって、つまりはそういうこと。
「おいで、ピンキーちゃん」
種を蒔く。ニョキニョキと、ピンキーちゃんの身体が大きく生長していく。
「もっともっと大きくなりなさい、ピンキーちゃん。あの巨人よりも大きくね」
〔ピギィッ!〕
時間をかけて、マナをどんどんと与えて、ピンキーちゃんはより巨大に生長していく。そしてとうとう目の前で縛り上げられている巨人よりも大きくなった。
「ピンキーちゃん、そいつを消化しちゃいなさい」
〔ピギャァァァスッ‼〕
ガブリと、ピンキーちゃんが巨人に食らいつく。しかしあまりの硬さに噛みちぎることはできないらしい。しかし問題はない。口に入った部分から徐々に徐々に消化していけばいいのだ。
〔コノ ダイチ ハ ワレラ ノ モノ …… イツカ カナラズ トリモドス ……〕
消化されながらも、巨人のつぶやきは止まらない。
〔ソノヒ ハ チカイ …… ワレラ ハ スベテ ヲ フミツブス ……〕
「ラナテュール様……」
「さあ、なんのことだろうね。交渉の余地があればその意味も分かったかもしれないけど」
そして10分後、巨人の姿は完全に消え失せた。
「──さて、衝撃的なモンスターではあったけど、それに気を取られてばかりもいられないよ2人とも」
「そ、そうね……っ! 私たちは引き続きモンスター狩りを進めないと……! 行くわよトカゲ娘!」
「分かってるよこのメンヘラエルフ! いちいち指図しないで!」
「んなっ! 誰がメンヘラエルフだこのトカゲッ!」
2人がこの場を後にして、やっとこさ私は壁づくりの作業へと戻れた。再びニョキニョキとデザートポプラの根を伸ばしながら、考えてしまうのは巨人の言葉。
「この大地は我らのもの、か……」
なんだっけな。確かそんなおとぎ話をどこかで読んだ気がする。
「あ、そうだ。巨人を率いたどこかの魔女が……ドラゴンと世界の覇権をかけて大戦争をするんだけど、結局どっちも大きなダメージを受けるに終わって、世界は巨人とドラゴン以外の種族のための世界になった、みたいな話だ」
争うだけ損、みたいな教訓の話として私が生まれるずっと昔から語り継がれている童話だった気がする。
「実は本当にあった話だったりして。なんて、そんなワケないか」
ちょうど壁も作り終わった。後はエルフの里内に侵入したモンスターを狩り尽くすだけだ。
「あー疲れた。ピンキーちゃんも疲れたよね?」
〔ピギィ~〕
巨大ピンキーちゃんの方はそうでもなさそうで、お腹を押さえてご満悦な様子だった。
「面白かった!」
「続きが気になる、読みたい!」
「今後どうなるのっ……!」
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