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あ、これドラゴンのやつだ

 サボテンライダーであるサボくんは自分の意思で全身の針を飛ばすことができる植物だ。ただ本来その威力というのはせいぜい相手を痛がらせることができる程度。だけど、そこに私がマナを注入した場合はその限りではない。


〔サボっサボっ!〕


「よくやってくれたね、サボくん!」


 サボくんの両手(のように見えるサボテンの部分)から発射された棘は正確に奴隷商2人の頭を打ち抜いており、ピクリとも動く様子はない。完全に死んだみたいだ。

 

 なにせこのジャングル最強モンスターといわれているらしいワイハータウロスも仕留められるのだから、いち人間程度を倒せないはずもない。私のマナで強化されたサボくんの棘は前に実験したところによれば鋼鉄くらいなら簡単に貫くみたいだったしね。

 

「な、なにが起こった……っ?」


 しかし未だに状況が飲み込めないのか、ダーズとかいう奴隷商はまだあんぐりと口を開いたままだ。

 

 まあいいかな。特にこれ以上話すこともないし……さっさと決着をつけちゃおう。


「サボくん」


〔サボサボっ!〕


 サボくんが今度はダーズへと狙いを定め、そしてズドンッ!

 

 ダーズが地面へと尻もちをつく。が、しかし、その棘は決して彼を貫いてはいない。

 

「──フゥゥゥッ!」


 突然、後ろから飛び出して来た粗末な衣服に身を包んだ赤髪の少女が、ガキンッ! と回し蹴りでその棘を弾き飛ばしてしまったのだ。


「……女の子、君も奴隷商の仲間なのかい?」


「……」


 少女は口をギュッと結んで私の問いには答えなかった。

 

 どうにも、ただの仲間っていう感じには見えないんだけどなぁ……。年もたぶんククイと同じかちょっと上くらい。ただまあ、お金に困っていそうな雰囲気はある。すごく古そうな服とか着てるしね。

 

「お、遅ぇんだよリノンっ!」


 尻もちをついでビビり散らかしていたダーズは、起き上がると少女の背中を蹴り飛ばす。


「お前は俺を守らなきゃならねーんだろうがっ! じゃなきゃお前もいっしょに死んじまうんだからよぉ! もっとしっかりしろよこの役立たずッ!」


「っ! ごめんなさいっ! ごめんなさいっ!」


 リノンと呼ばれたその少女は、ダーズに何度も蹴りつけられながらもなんの抵抗もしていなかった。

 

 おかしいな、単純な力じゃあのリノンって子の方が強そうに見えるんだけど……。ダーズの口ぶりからするに、なにか主従契約的な【呪い】でもかけられているのだろうか?


「いいか、リノン。お前はあのサボテンのモンスターと、他にハーフエルフが使役するモンスターを相手にしろっ! その間に俺とケインであのハーフエルフをとっ捕まえる」


「は、はいっ」


 伝えられた作戦へと頷くと、リノンはものすごいスピードでこちらへと迫ってきた。狙いはやはりサボくんのようだ。


〔サ、サボォっ?〕


 サボくんはリノンへと針を飛ばそうと照準を定めようとするが、しかし残像を残すほどの素早い彼女の動きに翻弄されてあたふたとしてしまっている。まあ元々サボテンライダー自体がそんな小回りが利くタイプの植物じゃないから仕方ない。

 

「ということは私の出番かな」


 私は再び空気中のマナへと干渉する。そして木々に絡まるツタを自在に操って、サボくんの正面へと広く網を作った。


「えっ⁉」


「はい、捕まえたー」


 リノンが網にかかった瞬間に私はトラップを発動。

 

「あっ!」


 網は瞬時に袋状になってリノンを閉じ込めると、木々の枝へとぶら下がった。


「しばらくそこで待っててね。いちおう忠告しておくと、そのツタにはマナを込めているから力任せじゃ切れないよ」

 

 リノンにそう言って、私はくるりとターン。

 

「さて、奴隷商のみなさん? 確かあのリノンって子がサボくんの相手をしている間に私をとっ捕まえるんじゃなかったっけ?」


「ぐっ! くそっ! 放せっ!」


 ダーズとケインと呼ばれた男、その2人は地面から生えた根っこに足を絡めとられて動けない状態になっていた。

 

 もちろん、私の仕業だ。だって奴隷商たちの動きが鈍かったから。良い的だったよ。


「さて、じゃあ奴隷商は殺すとして、あの女の子はどうするかな……」


 そう呟いていると、ザクザクザクっ! というなにかを切り刻む音が樹上から響いた。とっさに上を向く。


「おぉっ? なにあれ……!」


 私の視線の先にいたのは、網をバラバラにして落ちてくるリノン。しかし、その身体の一部の形がさきほどとはまったく異なっていた。

 

 真っ赤なウロコに覆われた大きな手足からは鋭い爪が伸びていて、顔も鼻から下がウロコに覆われてきらめいている。極めつけに異様なのはお尻から伸びた長い尻尾。その姿はもはや人間の少女のものではない。

 

〔サボサボッ!〕


 サボくんが空中から落下しているリノンへと向けて棘を放つ。


「ガァァァッ!」


 しかし、ザシュッ! と。硬質なはずのサボくんの棘は、リノンの振るった爪によって真っ二つに斬られている。なるほど、どうやら力ではどうにもできないはずのツタの網を切ったのもその爪のようだった。

 

 着地したリノンはサボくんへ再び向き直ると、深く深く息を吸った。すると、その赤いウロコに覆われた口元に、オレンジの光が集まり始める。なにをしようというのだろう……。

 

「……って、あれ?」 


 なんか私、知ってるぞこれ。だいぶ前にエルフの史書で読んだことがある気がする。確か500年前くらいにエルフの里を壊滅状態に導いた光、みたいな章タイトルで……。


「あ、そうだ。思い出した。【竜】だこれ」


 私はそそくさとサボくんの後ろに隠れると、チョイチョイと後ろに避難していたククイたちを手招いて呼ぶ。


「こっちこっち。ここに隠れて。危ないからさ」


「な、なにが起こるんですかっ? ラナテュールさんっ!」


「えっとね、たぶん【ドラゴンブレス】」


 それからまもなくして、オレンジ色の光が辺り一帯を包み込み、焼き尽くした。

「面白かった!」


「続きが気になる、読みたい!」


「今後どうなるのっ……!」


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