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救出しに行こう

 森の中をサボくんが走る。なるべく速く、でもなるべく揺れないような道を選んではいるけれど、それでも揺れるものは揺れる。

 

「わ、わわわわっ⁉ 速すぎませんか~っ?」


 ククイは振り落とされないようにと必死にサボくんの身体に掴まっていた。

 

 よかったね、このサボくんが棘の少ない子で。棘がびっしりと生えていたら今ごろ串刺しになっている。


「しかし、そんなに速いかな……」


「わ、私は馬車とやらにも乗ったことがないので、これはちょっと初めて感じる速さです~っ!」


「へぇ、そうなんだ。奇遇だね。私も馬車には乗ったことないよ」


 そもそもエルフの里付近から外に出たこともなかったしね。そうだ、今度気が向いたら近くの町に出て馬車に乗ってみよう。

 

「ラナテュールさんっ! シエスタとミーナはいまどの辺りにっ?」


「たぶんもうすぐだよ。しっかりと掴まっていてね、ククイ」


 サボくんへと進路変更の指示を出す。

 

 さあ、もうすぐ目的地(?)に到着だ。追手が私だったのが運の尽きだね。森で私から逃げられるわけないのだから。

 

 サボくんはジャングルには不似合いな男たち4人と粗末な服装の少女1人を見つけると、その行く先を塞ぐように急停止した。

 

「なっ⁉」


 彼らは突然正面に現れた私たちを見て、呆気にとられたのか口をあんぐりと開けて固まっている。

 

 そしてその男たちのうち2人が脇に抱えるようにしていたのは、口元を布のようなもので縛られているシエスタとミーナの姿だった。

 

「シエスタっ! ミーナっ!」


「んーっ! ん~~~っ!」


 言葉にならない声で叫ぶ2人。その姿に、ククイが思わずといった様子で前に飛び出しそうになるが、私はそれを手で制した。


「ククイ、ダメだよ。あいつら武装してる。それもけっこうガッツリとね」


 金属がこすれ合う音を響かせて、我に返った男たちが全員剣を抜きこちらに向ける。


「おい、おいおいおいおい~っ! ちょっとちょっとさぁ、これは完全に予定外だぜ!」


 サングラスの派手な男が文句を垂れ始める。


「なぁ、ハーフエルフのお嬢さん? 騒ぎも起こさず静かにことを運んだつもりだったのに、どうしてこんなにも早く俺たちを追ってこれたんだ?」


「それに答えてあげる義理はこちらには無いような気がするけど」


 男は嘘くさく笑うと、ニヤニヤとした表情で1歩前に出てくる。


「まぁ、そんなつれないこと言うなよな。俺の名はダーズ。ここから西に行った町のルルホノで商売をやっている者でね。実のところ争いたいと思ってきたわけじゃなかったのさ」


「じゃあ剣を下ろしなよ。そんな物騒なものをこちらに向けながら言われても信用できないに決まっているよね?」


「ははっ、そりゃそうだな。だがまあ『当初の予定では』って話だぜ。俺たちはな、人質をとってできる限り流血沙汰にはせずにお前さんを奴隷しょうひんにしたいと思ってたんだぜ? 平和的交渉プランだったのによぉ、まったく……」


 やれやれといった様子でダーズと名乗った男はため息を吐いた。

 

 なるほど。どうやら狙いは子供自体ではなく私の方だったらしい。それなら話は簡単に済みそうだな。


「私が目の前にこうしてやって来たわけだし、もうその子供たちは関係ないね? じゃあ早く解放してよ」


「いやいやいや、バカかよお前は」


 子供たちを抱えている2人の男が、自身の持つ剣をシエスタとミーナへと向けた。


「まさか俺たちが『はい、そうですね』とでも言って解放するとでも? 下手に動くなよ、ハーフエルフ。もしなにかしようとしたら……そうだな、そっちの髪が長い方のガキ!」


 ダーズがミーナへと指を差す。


「まずはそっちのガキを殺す。はははっ! いいよなぁ、人質が2人もいるってのはよ。片方をぶっ殺してもまだまだ交渉の余地があるもんな?」


「……まったく、これだから人間は」

 

 言ってから、いや? そうじゃないなと思い直す。だって人間にはククイや村の子供たちのように、お互いを思いやれるそんな存在もいたのだから。

 

 私はこれまで人間といえば金にうるさいだけの商人たちとしか関わってこなかったから、人間って生物は私たちエルフ(私はハーフエルフだけど)のように誇りや友情、愛情なんていうものが希薄なのかと思っていたけれど、そうじゃないのだ。

 

「そうだ。人間の中にもいろんな種類がいるんだよね、きっと」

 

 ククイのように変人だけど心優しい人々もいれば、目の前の男たちのように金のためなら弱者をいたぶり同族を殺すような極悪人もいる。


「人間って主語は人を定義するにはデカすぎるんだ、解釈が」


 そうだね。人間かどうかじゃない。善人か悪人かで、私は人を判断しよう。


「んーッ! んーッ!」


「やかましいぞクソガキッ! おい、ソイツの腕を1本落とせ! こっちが本気でヤる準備ができてるってことを見せつけてやるんだッ!」


 その指示に従って、ミーナを押さえつけている男が剣を彼女の右腕に当てた。


「やめてっ! ミーナッ‼」


 ククイがミーナへと走り寄ろうとするけれど、その必要はない。

 

「下がってククイ──サボくん、お願い」


〔サボサボッ!〕


 スダンッ! スダンッ! という音がサボくんの腕から響いたかと思うと、シエスタとミーナを抱えていた2人の男がまたたく間に膝から崩れ落ちた。


 次にすかさず私は空気中のマナに働きかけ、木々に巻き付いたツタを操った。シエスタたちをぐるっと絡めとり、ククイの元へと持っていく。


「──は……?」


 この間わずか1秒ちょっと。ダーズの後ろには、頭から大きな棘を生やして絶命している男の死体が2つできあがっていた。


「私ね、これから悪人は積極的に殺すことにするから、よろしく」

「面白かった!」


「続きが気になる、読みたい!」


「今後どうなるのっ……!」


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― 新着の感想 ―
[一言] 「悪人は積極的に殺す」いい言葉ですねw
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