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グリーンスクール - 初恋  作者: 辻澤 あきら
11/14

初恋-11

 六時間目が終わるとすぐに由理子は保健室に入った。しかし、そこにはもうミキの姿はなかった。早野先生に出ていったことを確認すると、二年E組の教室に向かった。

 三階に上がって、廊下に出るとそこにはミキがぼんやりと立ち尽くしていた。あまりの頼りなさに由理子は一瞬驚き、近づくこともためらわれた。ゆっくりと近づいて、声を掛けた。ミキはそのときようやく由理子に気づいたようで、由理子の顔を見た。

「どうしたの?」

おそるおそる訊ねるとミキはかすかに答えた。

「見つけた……」

「え?」

「見つけたの…、彼、彼がそう」

「本当?」

「うん」

「よかったわね」

「…うん」

 ミキは結局その日は声も掛けられなかったということだった。六時間目が終わると、早々に教室を出た彼、北斗君、とすれ違ったとき、はっきりと彼が探していた彼だとわかったということだった。

「でもね、足もがたがたして、全身硬直して動くこともできなかったの」

保健室の中で早野先生と由理子を前にミキは息せき切ったように話し出した。

「よかったわね」

「うん。あぁ、こんなとこにいたなんて」

「うちは私学だからね、遠くから通ってることもあるし、近所ばかり探してても見つからないわね」

「それで、どうするの?」

「明日、傘持ってきます。それで返します」

「一件落着ってとこね。これで、家にも帰れるし」

「帰りたくないな。この学校が気に入っちゃった」

「カレ、もいるしね」

「バレたか…」

楽しげな笑い声の中でミキはぺろりと舌を出して照れた仕種を見せた。


 昼休み、屋上でお弁当を食べながらミキは由理子に今日の計画を話した。帰りに追いかけていって、人気のないところで傘を返すことを。

「いまでもいいんじゃないの?」

「だって、人目があると恥ずかしいし、それに」

「それに、なに?」

「アドレス交換してもらおうかなって思ってるの」

「いいわね。でも、家は近いんじゃないの?」

「でも、学校に行ってると会えないし…、あー、あたしもこの学校に転校してきたいな」

「試験はあるわよ」

「頑張るもん」

 と、一人の少年が近づいてきた。中川だった。

「こんにちわ。おめでとうございます。見つかったそうですね」

「あ、ありがとう。あらためてお礼に行かなきゃって思ってたの。ホントにありがとうございました」

「いえいえ。お役に立てて光栄です。けど、これ」

中川はメモを差し出した。

「なんですか?」

「アフターケア、なんだけど、彼、北斗晃二君、あんまりいい評判じゃないよ」

ミキの表情が一瞬曇ったことを由理子は見て取った。

「別に、言わなくてもいいことかもしれないけど、彼のデータ。急いで調べたから片手落ちかもしれないけど」

「あ、ありがとう…」

「じゃあ、グッドラック」

 中川が立ち去るのを見ていたミキはメモを開くことなくポケットに押し込んだ。由理子は何も言えず、険しくなった表情のミキを見つめていた。


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