初恋-10
二年E組の前に来ると由理子は、そこにいた女生徒に声を掛けてメモにあった名前を告げてどこにいるか訊ねた。その女子生徒は教室を覗き込み、指さした。お目当ての少年は窓際の前の席にいて、頬杖をついてぼんやりとしていた。由理子はその少年を認めると、ミキの方に向き直って、どう、と訊ねた。と、ミキの様子が変なのに気づいた。ミキは半身を乗り出してじっと少年を見つめていた。
「ミキちゃん……」
おそるおそる声を掛けようとしたとき、予鈴が鳴った。由理子ははっとしてミキに声を掛けた。
「どうしたの、ミキちゃん」
ミキは応えなかった。身動きひとつしなかった。やがて本鈴が鳴り、由理子は慌ててその場からミキを連れ去った。
階段のところまで来て由理子は問い掛けた。
「どうだったの?」
「……わからない、…まだ、……よく…わからない。……けど、けど、似てるような、気がする……」
「じゃあ、放課後もう一回見に来よう」
「……、…ぅん……」
由理子は階段を上がり自分の教室に向かった。ミキはふらふらと階段を降りて保健室に向かった。
五時間目が終わるのを待ちわびてミキはまた二年E組の教室の前に立った。終鈴が鳴るとどの教室からもざわめきが大きくなり、早々と教室を飛び出す者がいた。二年E組からも飛び出すように何人かの男子が出てきて、扉を開け放していった。開け放たれた隙間からミキは少年を盗み見た。あいにく少年は校庭の方を向いていたので、顔ははっきりと見えなかった。やがて六時間目が始まってしまった。
ミキはまた、ふらふらと、保健室に戻った。




