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異世界転生したら、復讐心に燃える亡国のお姫様に見初められて復讐に振り回されて困ってます  作者: 兎まろ
第1章 異世界転生したら、復讐心に燃える亡国のお姫様に見初められて復讐に振り回されて困ってます
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第8話 おでかけ?観光名所!!二人の関係はいかほどに


 /01


  「あれは何。アテナ」


 夕方の繁華街で、ロシュとアテナは夕飯の買い出しの帰りに、ロシュは指を差してアテナに尋ねた。

 この繁華街は、海上都市ポセイドンの中でも活気溢れる市場のため、人でごった返していた。

 はぐれまいと、アテナはロシュの手を繋いでいた。

 

 アテナは、ロシュの指差す方向を見ると、納得した様子で答えた


 「あれはポセイドンタワーよ」



 「ポセイドンタワー?」


 ロシュは聞き返す。


 「海上都市ポセイドンが一望できる、観光スポットね」


 アテナはそう答えると、何か閃いたのかニヤリと笑う。


 「そうだ!ロシュ。私が今度の休みにポセイドンタワーに案内してあげるわ。まだロシュは海上都市ポセイドンに来たばっかりだもんね。せっかくだから、私が案内してあげるわ」


 アテナはそう言うと、上機嫌に浮足立っていた。


 アテナが今まで、ポセイドンタワーに一人で寂しく登った経験しかないから、ロシュと登れて上機嫌だとはロシュは知る由もなかった。



 「は、はあ」


 なので、ロシュは、アテナに圧倒されて生返事を返した。


 「しょうがないわね。任せなさい」


 などと、アテナはノリノリに答えるのだった。




 /02



 「なんなんだ。この落差は」


 観光へ行く当日。屋敷の玄関で、アテナがおめかしした姿を見たロシュは、これまでのアテナとは決定的に違い、絶句した。


 白のカーディガンに、花柄のフレアスカート。それに白のハイヒール。極めつけは、可愛らしい猫の耳を模したニット帽を被っている。普段より清楚である。


 アテナ自慢の栗毛色の長い髪も、心なしかいつもより艶がある気がする。


 今日のアテナは、何か違っていた。


 「どうかな」


 アテナは聞き返す。


 ロシュは、可愛らしい猫の耳のついたようなニット帽が一番気になってしょうがなかった。だが、アテナの趣味が地雷のような気がして怖い。


 「綺麗だね」


 ロシュは、月並みな言葉をひねり出すしかできなかった。


 アテナは、花が咲いたように上機嫌だった。



 /03 


 「あら、姉弟で観光かい。僕、お姉さんに連れてきてもらえて良かったねえ」


 ポセイドンタワーの入場券売り場で、ロシュは売り場のおばちゃんからそう言われた。

 ロシュは、憤慨した。


 アテナを手のかかる妹のように甲斐甲斐しく世話をしてきたと自負しているロシュにとって、その言葉は聞き捨てならなかった。

 アテナの脱ぎっぱなしの服をたたみ、食事は用意し、洗濯炊事ありとあらゆることをロシュはやってきた。


 「やだもう。おばさんったら」


 隣で、嬉しそうにまんざらでもなさそうに笑うアテナを見て、ロシュは絶望した。





 /04


 「うわあ。凄いなあ」

 

 観光客でいっぱいの展望台まで登ると、海上都市ポセイドンの街並みが一望できた。

 

 空も海も、そして街並みもすべてが一望できた。


 その景色には、ロシュも思わず、目を輝かせていた。


 「初めて誰かと来れたわ」


 アテナが隣で、物凄く悲しいことをぼそっと言ったことは、ロシュは聞かなかったことにした。



 すると、


 展望台フロアの隅で、一人で立ちすくんで困っている7歳くらいの小さな女の子がいるのにロシュは気づいた。


 「迷子かな」


 ロシュはその女の子のところまで歩いていき、目線の高さまでしゃがみ、声をかけた。


 「どうしたの。お嬢ちゃん」


 「困ってるわ。迷子してるわ」


 物凄く冷静に、淡々と自分の状況を説明する7歳児にロシュは出会った。




 /05


なっちゃんと言う少女の親を探すことになったロシュとアテナは、展望台を一周したが結局親とは会えなかった。


 「やっぱり下の入口で待ってたりするんじゃないかな」


 アテナは言う。


 「ありえるわ。パパもママも私がかなり賢いと思い込んでいるもの。だけど、パパもママも見落としてるわ。私が、極度のビビりで、誰かに助けを求めることもできないし、一人でこの場を離れることもできないわ」


 7歳児とは思えない、的確な自己分析をするなっちゃん。


 ロシュは微笑みながら言った。

 

 「それじゃあ、一緒に入り口まで行こっか」




 魔法式昇降機で、展望台から下の階まで降りる最中、なっちゃんはアテナに質問した。


 「なんで、お姉ちゃんは室内なのに、その変な頭の帽子を被っているの」


 可愛らしい猫の耳を模したようなニット帽を被ったアテナから笑みが消えた。


 「なっちゃん。これはおしゃれなのよ」


 アテナは努めて冷静に答えた。


 「ふーん。じゃあ、お姉ちゃんと金髪のお兄ちゃんは恋人同士なの」


 「違うよ」 


 ロシュは即答した。


 アテナは、少し傷ついたような表情を見せた。


 「お姉ちゃんはそうでもなさ」

 


 「なっちゃん!!」

 

 アテナは、それ以上はもうやめて、と涙目で顔を横に振った。


 なっちゃんは、アテナのその様子から人生の難しさを一つ学び、言葉を飲み込んだ。



 

 ガコン。



 魔法式昇降機は、地上の入口に着いたようだ。



 扉が開くと、なっちゃんの顔を見て、駆け寄る夫婦がいた。


 「あ、パパとママだ。ありがとう。お姉ちゃん。お兄ちゃん」



 そう言うと、なっちゃんは夫婦に手を取られ、ロシュとアテナは夫婦からお礼を言われて別れた。


 



 /06


 夕日が照らすポセイドンタワーからの帰り道。


 「ねえ。ロシュ。どうだった。ポセイドンタワー」


 アテナは、後ろからついてくるロシュに尋ねた。


 「凄かったね。街並みが綺麗だった」



 「でしょう」


 アテナはくるっとロシュの方に振り返り満足気に笑った。


 矢先、アテナは態勢が崩れ、アテナは尻もちをついた。



 「あいたた」


 見ると、アテナのハイヒールのカカトが折れていた。

 アテナの足はくじいて、捻挫していた


 「慣れない靴で歩くからだよ」


 ロシュはしゃがんで背を向けた。


 「えっと」


 アテナはロシュの意図を察し、赤面した。





 くすくすくす。


 アテナをおんぶしたロシュの姿を見た道行く人たちは、微笑みながら口にする。


 ーーー仲の良い兄妹ですね。



 その声を聴きながら、ロシュは満足気に屋敷へと帰るのであった。


 やっぱり自分が兄ではないか、と。






 /07



「ねえ。ロシュ。明日はポセイドンドームに行きましょう」



 寝室のベッドの上で、観光雑誌を広げてアテナははしゃぐ。


 もう眠りたいのに、寝かせてもらえないロシュはたまらず、アテナを見る。


 「明日はし ご と」



 アテナは、ちぇーと口をすぼめて、布団に入った。

 

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