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異世界転生したら、復讐心に燃える亡国のお姫様に見初められて復讐に振り回されて困ってます  作者: 兎まろ
第1章 異世界転生したら、復讐心に燃える亡国のお姫様に見初められて復讐に振り回されて困ってます
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第3話 打倒ドラマタ!!資金作りはギルドから?邪竜ファントムとの死闘 中編


 /01

  

 視界は真っ暗闇に包まれた。


 僕は土砂に呑み込まれて、アテナがロゼルたちに連れさらわれるのをただ、目の前で見ていることしかできなかった。


 どれぐらいの時間が過ぎたのだろう。暗闇の中で、見動きもできない。


 ーーー本当に申し訳ないことをした。



 突然、僕は幼い声が聴こえた気がした。

 すると、微かに光が見えた。そこに手を伸ばしてみると、



 気がつくと、僕は白い空間にいた。静謐で神秘的な空間。 




 僕の目の前には、ゆらゆらと人魂のようなものが浮いていた。

  



 「ここは。あなたは一体」

 

ーーーはじめまして、だな。もう一人の俺。否。俺はもう消滅したから、君は、疑いようもなく君自身だ。


 「ロシュさん?」

 


 ーーーそうなる、のかな。俺の魂は消滅したからこの世にはいないのだけど。これは身体の記憶というのかな。経験値を蓄積している存在だ



 「身体の記憶」


  ーーーこれまでのロシュとして培った経験を君に還元することができる。今は、昔から常時魔力を肉体に染み込ませてトレーニングしていた恩恵を得られているだけで、魔法の使い方や魔力の使い方などは君は素人だ。


 「なら、僕は今以上に強くなれるということですか」



 ーーー不可能じゃない。だけど、それは、非常に危険な行為だ。他者の経験を引き受けるということは、無から有に変わることだ。人の概念とは不可知論のように見えないもの、認識できないものは、存在しないと同義だ。それを知れば、君は君としての自我を保てなくなるかもしれない。100%経験を引継げば、今の君は消え、これまでのロシュになってしまうかもしれない。




 「僕がどうなろうと関係ないです。今、大事なことはアテナを助けることができるのか、できないのかだけです」


 

 ーーー君の覚悟は分かった。ならば、まずは2%からだ。だが、一度制限を外してしまえば、水の流れは止まらない。経験を引き継ぐ量を調節することはできるが、止めることはできない。最後は遅かれ速かれ、ロシュの経験を君は100%引き継ぐ羽目に合う。それでも、いいのか。



 「構いません」



 ーーーそうだ。君がそういう答えを出すと分かっていたから、本当に済まないことをしたと思ったんだ。



 ゆらゆらと揺れる人魂は、また、僕の中に入ってきた。


 ーーー俺たちはいずれ一つの存在に混ざり合う。だから、それまでは、どうか。。。




 /02

 

 霧の山の中腹で、小さなスペースがあり、そこにアテナは寝転ばされていた。

 アテナは怯えていた。

 痺れ薬を打たれて、魔力はおろか身体すら動かない。


 目の前には下卑た笑みを浮かべる男たち3人がいた。

 

 いつもアテナにちょっかいをかけていた赤髪の男、ロゼルだ。

 

 「へへへ、ロゼル。今すぐ報酬をくれよ」



 仲間の男が、ロゼルに話しかけた。

 赤髪の若い男、ロゼルも頷く。


 「まあ、待て」   


 ロゼルは、アテナの目の前まで歩き、アテナの目の高さまで座り込み、汚い言葉を吐いた。


 「俺がアテナに用があるんだ。今まで貧乏で落ちぶれて、顔だけ可愛いのに、俺の施しも、尻尾も、媚も売らない。お高く止まったこのクソ女がよ」


 


 アテナは涙を堪えた。滅ぼされた祖国ルクセル再興のために、自分のできる限りのことをやってきた。屋根のない生活も経験したし、食べるものに困り、ごみ捨て場を漁ったこともあった。貧乏を受け入れて、それでも再起を目指してきた。

 

 だけど、王族として、一人の人間として、そして、女性として、尊厳だけは必死に守ってきた。ちっぽけかもしれないが、なるべく高貴であろうとしたんだ。


 ロゼルはアテナの胸ぐらを掴み、顔を近づけて、目の前で言葉を吐く。


 「この女を地獄に落としたくて、仕方なかったんだ。邪竜を倒せば、全てがうまく行く。倒せば、人並みの幸せが訪れる。そんな夢をこの女が見てること自体、腹立たしくてよ」


 仲間の男たちは、ロゼルの言動に引いていた。マジかよ、と。


 ロゼルは、アテナの顎を掴み、唇を強引に奪おうとした。


 刹那。


 「だから、歳下に見られるのは嫌なんだ」



 ロゼルの首筋を鋭利なナイフが、かすめるのを感じた。

 ナイフは崖の岩に深く突き刺さる。


 ロゼルの顔が強ばる。動きが止まる。なにかにみられている




 ーーー数百メートル先で金髪碧眼の13歳くらいの少年が、瞳を蒼く光らせて、こちらを見ている。

 ゆっくりと金髪碧眼の少年が、妖しく瞳を光らせて、歩いてやってくる。


 「ロシュ・・・」


 アテナは金髪碧眼の少年が来てくれたことに安心して、涙が浮かんできた。

 


 


 03/


 ロゼルや取り巻き二人がロシュに気を取られている。


 ロシュは歩いて距離を詰める間に、ロシュは詠唱を始めた。


 ロシュは少し怒っていた。


 一手で、敵3名を戦闘不能まで持っていくつもりだった。


 「ちんちくりん、よく生きてこれたな」  


 ロゼルは、ロシュに挑発した。


 ロシュはもう安い言葉など効かなかった。ただ、最後に一言言えば十分だと思っていた。



 ロシュは、前に歩いて進み、ロゼルたちの間合いに入った。

 ロゼルたちは剣を振りかざし、一斉にロシュに攻撃を仕掛けてきた。


 

 ロシュは身体の周りから風が生まれ始めていた。

 ロシュは、元の身体の所有者から、簡単な風魔法の使い方と魔力の練り方の経験を引き継いだ。


 風魔法。


 「ウインド・ストーム」


 暴風をひねり出し、ロシュに飛びかかってきたロゼルたちを逆に崖の壁に思いっきり打ち付けた。


 痛みのあまり、ロゼルの取り巻き二人はうずくまることしかできない。


 ロシュは腰の刀を鞘のついたまま、引き抜き、ロゼルに振りかざした。

 ロゼルも壁に勢いよく打ち付けられた痛みのあまり、満足にから動けない。


 「待ってくれ。待ってくれ。俺が悪かった。坊主。強えな。分かった。もうアテナには手を出さないから、手打ちといかないか。」



 ロシュは言いたい一言がやっと言えた。


 「うるせえ。馬鹿」


 刀の鞘を構えたロシュは、容赦なく思いっきり振り下ろした。

 



 04/



アテナの痺れ薬の解薬をロゼルたちから取り、アテナがなんとか動けるようになりまで、小一時間がかかった。



 「偉い!偉いよ。ロシュ。さすが私が見込んだメンバー」


 泥まみれ髪を整えながら、アテナは、ロシュを褒めちぎった。


 「無事でよかったよ。アテナ」


 だけど、今回のクエストは失敗だとロシュは思った。

 ロゼルたちの妨害で、アテナの消耗が激しすぎた。


 「アクシデントも入ったから、無理だと思うなら、いつでも引き返していいからね」


 

 僕ことロシュは、アテナに言った。



 アテナはまた、再び、キッとロシュを睨みつけた。




 「まだ、諦めるときじゃないわ。私は無理なことはしない主義なの。いつでもリスクとリターンを天秤にかけてるわ。まだよ。まだ、ロシュ。あなたと私の力ならこのクエストは全然行けるって判断してるの」


 ロシュは、アテナを見た。

 アテナの目はまだ死んでいなかった。むしろ、情熱に燃え上がった良い目をしているとロシュは思った。


 

ーーーードラマタを滅ぼしたいの


ロシュは、初めてアテナと出会ったあのとき。アテナは全裸で恥も屈辱もすべてをありのままさらけ出して、夢をロシュに語った。あのときは、正直、頭のネジが飛んでると思った。


 だが、


 「なんたって、ドラマタを倒すんだもんね」


 今は、ロシュは、アテナの背中を押した。



 ロシュは、初めてアテナに会ったときに言われた、大国ドラマタを倒すという夢が、彼女にとって夢物語ではなく、本気で実現しようとこれまで必死に走り続けてきた過程なのだと実感した。


 「ええ。そうよ。だんだんと分かってきたじゃない。ロシュ」


 泥に塗れたアテナは、ロシュが出会った中で一番眩しいと思えるような、ニカッと笑顔を見せた。







 /06


 「ここね」

 

 アテナは緊張感を滲ませながら呟いた。

 霧の山の頂上付近で洞窟を発見した。ここが恐らく、邪竜ファントムの根城だった。これから突撃を試みようとした矢先。



 刹那。

 突然。旋風が舞った。



 『我の根城にまた人間か。まったく邪竜、邪竜とうるさいのう。それはあくまでお前たち人間の価値観だろう』

 


 黒い影。遥か上空から巨大な翼が見える。


 「きたわ」


 アテナは武者震いをする。ロシュは頷く。




 『お前たちの摂理が間違いだとはついぞ気付こうとしない、つくづく愚かな種族よ』


 黒の巨体の邪竜は、地面に地響きと共に着地する。

 


 隻眼の邪竜は咆哮を上げる。



 『のう。人間』




 ロシュとアテナは邪竜ファントムとの死闘がゴングが鳴った。







 


 




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