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異世界転生したら、復讐心に燃える亡国のお姫様に見初められて復讐に振り回されて困ってます  作者: 兎まろ
第1章 異世界転生したら、復讐心に燃える亡国のお姫様に見初められて復讐に振り回されて困ってます
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第1話 異世界転生したら、復讐心に燃える亡国のお姫様に見初められました


 01/



 タイヤのこすれる嫌な音がした。

 キキーと急ブレーキをかける心臓に悪い音も。


 早朝の誰も他に歩行者のいない交差点。

 僕は横断歩道を渡っていた。

 横断歩道は青信号だった。

 


 だが、運転しているのは人だ。人は不注意だったり、過信だったりで、そんな安全神話はいとも簡単に崩れる。


 目の前に突っ込んでくる10tトラック。

 運転席の男の顔が見えた。焦った顔が見えた。こんなはずじゃない、と。

 男にも人生があるのだ。こんなことで人生が狂うのは、もったいないなあ、なんて思った。


 僕は、走馬灯のようにこれまでの人生がフラッシュバックした。



 草間和樹。20歳。


 何の取り柄もなく、ただなんとなく生きてきた一生は、、、ここで幕を閉じるのか。





 思い残すことがあるとすれば、そう。病気の妹を残して先に逝ってしまうことだろうか。












 

/02


 ここは天国だろうか。僕は何もない真っ白な世界にいた。

 静謐せいひつで神秘的な空間だと思った。

 その白の世界の遠くから、人魂ひとだまのようなものが、ゆらゆらとこちらにやってくる。

 人魂ひとだまは、僕の目の前まで来ると、少し逡巡しゅんじゅんするかのように僕の前をゆらゆらと行ったり来たりする。


 だが、意を決したのか、人魂ひとだまは僕の身体に入ってきた。




 ―――あとは、お前に任せた。







 /03

 

    

 小川にうずくまっていた。

 口に入った葉っぱを吐き出しながら、僕はげほげほ吐いた。

 森の匂いがする。見回すと、木々が一層に多い茂る森林地帯だった。

 小川の水を少し飲み、僕は起き上がり、小川の水面を眺めた。

 水面に映る僕の顔は明らかに13歳程度の幼い顔立ちだった。金髪碧眼でかなり少女かと一瞬見間違うほどの美少年だった。


 「はっ?」


 これが自分。何かの間違いじゃないのか。


 金髪碧眼で色白で明らかに不健康そうな少年。


 それが僕だった。



 「僕は死んだはずじゃ。転生したのか。だけど、この身体の宿主は一体」


 唐突過ぎて、頭がついていけなかった。


 そんな思考を止めていた僕は、



 「生きてるぞ。ちっまだロシュが生きている」


 森林地帯の崖の上から、黒のローブを着た顔を隠した連中が僕を見て騒いでいる。


 かなり剣呑とした雰囲気だ。


 なんだ。なんだろう。いや、嫌な予感しかしない。『ちっまだロシュが生きてるぞ』なんて、まるでそのロシュさんが生きてちゃまずいみたいじゃないか。



 

 黒のローブを着た連中がぞろぞろと森の奥から、ドスドス僕の周りを取り囲んでくる。



 総勢10名。



 僕は気付いたら、黒のローブを着た連中に包囲されていた。


 怖い。あまり怖さのあまり僕は、声が引きつりそうになった。



 「ロシュ。おとなしく死んでくれていれば良かったものを。まあ、いい。お前が我々を裏切った報い、受けてもらおうか」


 黒のローブを着た、黒ずくめの連中は全員銀色の儀式用の剣を引き抜いた。



 僕は焦った。どうしよう。どうしよう。

 焦っていると、思わずここから離れようと思いっきり地面を蹴って走って逃げようとした。


 「うわああああ」


 「えっ?」


 地面を蹴って、跳躍ちょうやくすると、気がついたら、黒ずくめの黒のローブを着た連中を蹴散けちらして、囲まれていた場所から遙か彼方に離れていた。


 「くそが。やっぱりロシュは化け物だ。さっきはあんなにおとなしくしていたのに、気が変わったか」


 黒ずくめの黒フードの連中の一人が言った。


 「どういうことだ。なにもしてないのに、なんだか力が湧いてくる」


 身体の感覚は13歳くらいなので、前世の20歳の頃に比べたらすごく軽いのは当然だが、それでも河原にある岩が簡単に持ち上げれそうに思えていた。


 僕は自身の身長以上ある岩に手をかけ、


 ひょい、と持ち上げれてしまった。



 「まじかよ。これ」


 

 黒ずくめの黒いローブを着た連中は明らかに焦っている。


 「魔法だ。肉弾戦ではやつには敵わん。上級魔法で一気に片をつける」


 黒ずくめの黒いローブを着た連中は詠唱に入る。


 詠唱が続くにつれ、天候が青空から黒雲に変わり、地響きがする。



 僕は焦った。


 小川の石を思いっきり黒ずくめの黒いローブの連中めがけて投げるも、瞬時に火の玉を魔法で出し、河原の岩は一瞬で砕けて散る。


 「どうする。無理だろう。これは、流石に」


 僕は狼狽ろうばいした。だが、腰に下げた剣に目が行った。宝石であしらわれた宝剣のような趣き。


 僕は迷わずこの剣を引き抜いた。


 剣は、思っていたような剣ではなく、刀だった。刀身は、真っ赤に赤く燃え、見ていたら、吸い込まれそうになる。


 「チッ。詠唱はまだか」


 「準備できました。いつでも行けます」



 刀が振動する。僕の身体の中に流れるエネルギーのようなものを刀が吸い込んでいく。代わりに、刀が僕にエネルギーのようなものを分け与えてくれる。お互いのエネルギーが交換し終わったとき、刀は刀身全体が真っ赤に燃え上がっていく。炎をまとう。


 「サンダーインパクト」


 黒ずくめの黒ローブを着た連中が、総勢10名で組んだ巨大魔法を撃つ。



 僕は、刀を構えて、雷の魔法めがけて、振り抜いた。



 ―――炎蛇えんじゃ

 

 刀身から炎の蛇が生まれ、光のような速さで、雷の魔法を飲み込み、黒ローブの黒ずくめの連中を飲み込んだ。



 業火に燃え盛る森林地帯を眺めて、絶句した。

 黒ローブの連中はたまらず小川に飛び込む。


 幸い、小川があるから、命の危機はないように感じた。

 僕は今のうちに逃げることにした。



 「何なんだ。この刀」


 真っ赤に燃える刀を鞘に収め、この場を離れた。








  /04

 

 「腹、減ったな」



 お腹が鳴るのを我慢しながら、森林地帯をさまよっていた。

 町なども見当たらず、当てもなくさまよって、おそらく2時間は過ぎたと思う。



 森の木々や野生動物に目を奪われていると、きゃーという悲鳴が聴こえた。



 


 「へへへ。亡国のお姫様よ。そろそろ観念しないか」

 

 馬に乗った頬に傷のある鎧に身を包んだ男を中心に兵士たちが、森の大木に少女を追い込んでいた。



 「何よ。あんたたちに、くれてやるものなんて何一つ有りはしないわ」


 長い栗色の髪をはためかせながら、神の造形物かのように顔の整った少女はしゃーと威嚇した。


 「もらうものは、残念ながらまだあるんだなあ。あんたの小さな小さな国はもう頂いちまったが、まだあんたを奪っていねえ。あんたは絶世のべっぴんだ。うちの王子様があんたにご執心なのさ。あんたを妻にほしいのか、愛人にしたいのか。知らないが、まあ、滅ぼされた国の王族に嫁ぐのが、亡国のお姫様の定めなんだろうよ」



 ゲラゲラと兵士たちが笑う。長い栗色の髪の少女は悔しそうに涙目で兵士たちを睨みつける。



 「あのさ。さすがに、滅ぼされた国に嫁ぐのは、人生あんまりなんじゃないかな」


 僕は、草の茂みを分け入って、少女たちの横に出た。


 金髪碧眼で少女かと見間違うほどの美少年が急に現れるものだから、一同驚いていた。


 「なんだ。このガキ。まさか、エルフ族か。いや、耳が人間だな」


 兵士長であろう馬に乗った頬に傷のある男が言った。


 「てめえ。何者だ」


 僕は反芻はんすうする。僕は誰なんだろう。先程の黒ずくめの人たちは僕をロシュと呼んでいた。


 「ロシュだ」


 「やろうってのか、坊主」


 僕は、森の大木に追い込まれた少女を見た。長い栗色をなびかせながら、心配そうに僕の顔を見ていた。たしかに、息を呑むほど美人だ。歳の頃はおそらく15歳くらいか。前世の頃の病気の妹と同じ年頃だ。


 それだけで、僕は戦う理由になった。



 「臨むところだ。やろう」


 その一言が合図で、一気に僕ことロシュに兵士たちがなだれ込んできた。


 

 僕は拳に思いっきり力を込め、兵士の一人の兜を殴った。

 


 がっしゃああああああああああん



 「はっ?」

 「嘘っ」



 他の兵士たちは呆然と、少女はあ然と、僕に殴られた兵士が遥か彼方に転げていくのを見ていた。



 思ったとおりだった。僕のこの身体の元の宿主はおそらくチート級に鍛え抜かれている。圧倒的に強い。


 兵士が呆然としている間に、森に落ちていたたくさんの木の棒を拾い、兵士のかぶとに連打で打ち込みまくった。

 かぶとを一回殴るたびに、パンっと木の棒が消えてなくなるので、すぐさま新しい木の棒を拾いあげ、また殴る。


 一連の動きを目にも止まらない速さで遂行していく。殴られるたびに、兵士たちは、ぱたっと倒れ、気絶していく。


 最後に残ったのは、馬に乗った頬に傷のある兵士長だった。



 「てめえ、大国ドグマタに逆らってタダで済むと思うなよ」


 チンピラのようなウリ文句を言ってきた。


 「だから、さっきから言ってるでしょ、望むところだって」



 兵士長は剣を抜いて、ロシュを串刺しにしようと突いてくる。ロシュは、軽く跳躍ちょうやくをし、木の棒を兵士長めがけてフルスイングした。



 「きゃん」



 兵士長も馬から落馬し、森の遥か奥に転がり飛んで行ってしまった。








 /05


「あんた、強いのね」


 ロシュと長い栗色の髪の少女は、増援が来るかもしれないから、兵士たちとひと悶着もんちゃくした現場からすぐに離れ、森林の中の洞窟の中に隠れていた。


 長い栗色の髪を指でときながら、少し笑みを浮かべながら少女は、ロシュを見ていた。


 少女の微笑みは、やはり人形のように端正な顔立ちのため、見惚れるほどではあった。


 「よく分からないけど、強いのかな僕」


 ロシュは自分の手をまじまじと見ながら、慣れないながらも闘った自身のこれまでの行いを振り返っていた。


 「めちゃくちゃ強いわ。あのギタギタにされた兵士長は名の通った軍人よ。私の祖国をめちゃくちゃに蹂躙じゅうりんしたくらいには」


 少女は悔しそうに言う。

 僕はその様子を見ながら、少し同情した。


 「ロシュっていうのよね。私はアテナ」


 栗色の髪の少女、アテナはそう言った。


 アテナは指で長い栗色の髪をとく。

 アテナは少し頬を赤らめながら、しばし沈黙が流れる。


 「なあ、亡国のお姫様って」


 アテナは目を細めて言った。


 「私の祖国はルクセルって言うの。西の辺境の小さな国。小さいし貧しいけれど、だけど人は暖かい良いところだったわ」


 「そっか。あんたも大変なんだな」



 アテナはキッとロシュを睨み、言った。


 「同情なんてやめて!!私はあんたをこれから支配する!!!」


 アテナは、薄手の白いワンピースに手をかけ、一気に服を降ろす。


 ―――は?



 アテナは服のこすれる音を出しながら、ロシュの目の前で服を一糸まとわず生まれたままの姿になりやがった。



 「どうせ、このまま行けば、私はドラマタの王子の手に落ちる。だったらもう手段は選ばない」


 アテナは絢爛けんらんと目を輝かせながら、ロシュににじりよってくる。


 ロシュは、思った。こいつ、したたかだなって。


 ただ、ロシュはアテナに対して、劣情なんて抱かなかった。

 アテナを見ていると、あくまで、ロシュの中には、前世の頃に残してきた病気の妹と過ごした病院での記憶だけが鮮明に蘇る。

 兄として、妹に何もしてやれなかった後悔。


 その心残りが、年の変わらないアテナと重ねていた。



 (アテナは、僕に力になれって言いたいのだろうなあ)


 アテナはあまりの不器用さなのか、覚悟が決まり過ぎて頭のネジが飛んでいるのか分からないが、ロシュは笑った。


 「嬉しいわよね。どんな男でも私に好意の目を寄せてくるのだから」

 


 「いや、そんなんじゃないよ」

  

 ロシュはワンピースをアテナに放り投げた。


 「嘘っ」


 アテナは呆然としていた。


 「服を着なよ」


 ロシュはぶっきらぼうに言った。


 「どうしてよ。何が気に食わないの。どうしたら、あんたは私に力を貸してくれるのよ」


 アテナは悔しそうに涙を浮かべて言った。


 「何もいらないよ」


 ロシュは優しげに言った。


 アテナはえっと何を言ってるのか理解できない表情を浮かべていた。


 「だから、何もいらない。アテナは何をしたいんだ」



 アテナは少しグズつきながら、

 ぼそっと


 「ドラマタを滅ぼしたい」


 さらりと頭のネジの飛んだことを言ってきた。







 「まじ?」

見切り発車\(^o^)/

異世界転生が好きな方!!この小説は邪道ですけど、それでも続きが気になったら、ブックマークや評価もお願いします


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