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五.

 2日後、仕事の都合をつけて休みをとって病院へ行った。

母の病室に入ると、個室で一人ぽつんとベッドに横たわり婦人雑誌を見ている母がいた。

「こんにちは」

私と君枝が笑顔で病室に入っていくと母も笑った。

「今日、会社は?休んだの?」

「うん、本当は昨日、顔を見に来たかったんだけど、ちょっと都合がつかなくてね」

「そんな無理しなくても良いのに」

 顔色も良く声も明るい受け答えに安心した。

 前日、君枝が看護師を通じて担当医のアポイントを取っておいてくれたので、その時間まで母と雑談をして笑った、そして約束の時間になり担当の先生に挨拶してくると言って君枝とナースステーションへ行くと、すぐに隣にあるそれほど広くない部屋に通されて挨拶をかわした。

「先日来ていた長男の方は仙台に住んでおられるということで遠いですし、急にこちらに来ていただくことも難しいと思いましたので、それよりも近くに住んでいらっしゃる次男の方にお話をしておいた方が、これからのこともありますので・・・」

 少し含みを残したような言い方に疑問を感じたが、担当医がCT画像を見やすいようにこちらに向けて見せてくれたとき、私は咄嗟に何かを感じた。

「単刀直入に言います、お母さまは癌です。既にすい臓から肝臓に転移しておりステージⅣ」

 改めて言葉で言われた瞬間、専門的な知識が無い私にも母は長くないのだとわかった。

「余命は3か月ぐらいかと思われます、年を越すことは出来ないかもしれません」

 母親の余命宣告を受けているのに、どこか他人事のようで自分でも驚くほど冷静で、本当は悲しいはずなのになんの感情も込み上げてこない。

「ご存知かもしれませんが、沈黙の臓器と言われている肝臓の癌ですので、今まではあまり痛みを感じることはなかったかもしれませんが、これからは恐らく痛みを・・・激痛を伴うようなことが起こってくると思われます」

 私の中で答えは決まっていたので医師の話を遮るつもりはなかったが淡々と切り出した。

「そうですか・・・もちろん延命治療は必要ありません。もしもの時に人工呼吸器も必要ありませんし手術も必要ありません。ただ・・・痛みだけは、痛みだけはあまり感じないようにしてあげたい、だからモルヒネでもなんでも、少しでも痛みを感じないようにだけはしてください」

 担当医師の目を見ながら話す私の態度に、医師も、そして傍でメモを取っている看護師長も驚いたような顔で私を見た。

「わかりました、それでしたら貼るタイプのモルヒネのような麻薬のパッチを使います、徐々に会話も出来なくなるかもしれませんが・・・」

「それで結構です、それなら本人もわからないでしょうし」

 こう言った途端に感情が込み上げてきて声が上ずったが、涙だけは必死に堪えた。

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