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二十六.

 役所へ提出する書類などを受け取り、入院費の清算などは今まで通り兄宛てに請求するように手続きを済ませてからナースステーションへ向かうと、顔なじみのベテラン看護師と共に霊安室へ向かった。

 薄暗い照明のひんやりした部屋に線香の香が立ち込めていた、もう一度母の顔にかけられていた布を取った瞬間に、張り詰めていた心の何かが切れて涙が込み上げてきたが何とか堪え、葬儀屋のスタッフが母を霊柩車のストレッチャーに乗せ換えると看護師に頭を下げて部屋を出た。

 霊安室のすぐ横にある扉から外に出ると、母の入院しているフロアの看護師たちの多くが見送りに来ていた、あの若い看護師もそして母のお気に入りだった男性看護師もいる。

「この度は、母が大変お世話に・・・」

 そう言いかけた途端、堪えていた涙が溢れて声が出せなくなった。

 深々と頭を下げると、君枝が傍に寄り添って背中に手を当ててくれた。

「大変お世話になりました」

 涙声になってしまったが、なんとか言葉にすると、あの若い看護師はまた泣いていた。

 もう一度深く頭を下げると、すぐに霊柩車に乗り込み病院を後にした。

 結局午前中に電話し4、5時間もすれば来ると思っていた兄が来ないため葬儀屋との打ち合わせは全て私がすることになった、檀上の花の飾りつけから棺の種類、霊柩車の車種や通夜や葬儀の際の食事の手配、火葬場の都合もあったが通夜と告別式の日程も全て私が決めた。

 母を失って茫然としている父には無理だと思ったし、いざとなると決断力に欠ける兄もあてには出来ないと思っていたのでそれで良いと思ったし、私が勝手にしても母は文句を言わないだろうと思った。

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