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二十五.

「お仕度終わりましたので、どうぞ」

 出ていく看護師の中に、母のお気に入りのあの若い女性の看護師がいた、ベテランではなくとも今まで多くの別れを経験しているはずだが、彼女だけ目を真っ赤にして他の看護師に肩を抱かれるようにして部屋を出ていったのを見て、以前彼女が自分の母親に似ていると言っていた言葉を思い出した。

君枝に促されて最初に部屋に入った、病室に置かれていた器具類は全て片付けられ、酸素マスクが取り外されていて綺麗に化粧された母の顔は今にも目を覚ましそうで、その顔を見た途端に私は言葉を発せなくなった、それまではどこか客観的に母の最期の瞬間を見ていた、しかし頬紅がわずかに施された顔を見た瞬間に全てを実感したが泣くことは堪えた、自分がやらなければいけないことがたくさんある、まだ到着しない兄はあてにできないし、わずかに痴呆の兆候の見られる父に任せるわけにはいかない。

 それぞれが最期の別れを病室で済ませると、母は霊安室に運ばれた。

 叔父、叔母がひとまず帰っていき、私は職場に連絡を入れて暫く休むことを告げると、父を車に乗せて実家へ向かった。

 父は戯言のように母がいなくなったこと、もうこの家に戻ってこないことをぶつぶつとつぶやいていたが、私は母を病院から連れて来るための準備をしなければならなかった。

「親父、葬儀はすぐそこの葬儀屋に頼んでいいよな」

 父はだまって頷いた。

「今から行ってくる、お袋をいつまでも病院に一人で残しておくわけにはいかないからな」

「頼む・・・」

 父が力なく答えると君枝を伴って近くの葬儀屋を訪れ、母を引き取りに行く手配と葬儀屋の霊安所に葬儀の日まで安置してもらえるように手配して、葬儀屋の車で病院に母を引き取りに向かった。

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