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十六.

 12月に入った、私の仕事は幸いにも年末だからといって忙しくなるということは無かった、もちろん暇になるわけではなかったが、土日祝日は休みだし残業もほとんど無かったので出先から直接帰れそうな日には病院で君枝と病室で待ち合わせることが多かった。

 そんなある日、病室に行くと麻薬のパッチが効いているのか母はぐっすり眠っていて、私と君枝が病室に入っても気づかず、君枝が洗濯を終えて暫くした頃にようやく目を覚ました。

「なんだ、来てたの、起こしてくれれば良かったのに」

「気持ち良さそうに寝てたからさ」

 母は私と君枝の顔を見て微笑むと、ぽつりと言った。

「夢を見ていたのよ、私のお葬式の夢なんだけど・・・」

 その言葉を聞いてドキッとした、まさか余命の話を誰かがしたのではないかと思った。

「なんだよ葬式って、縁起でもねえな」

 私はわざと笑って言うと母が答えた。

「でもね、お前と君ちゃんの座る席とお酒が無いんだよ、私がお酒持ってきてって言っているのよ、自分のお葬式なのになんか変よね」

「まあ夢だからな」

 笑って誤魔化すしかなかった、というかそれ以上は言葉が見つからなくて言えなかった。

「そうだね」

 母も笑顔を見せたが、心の中では笑えなかった。

 この頃には酸素吸入を行うようになった、まだ鼻の穴に管を差し込むだけのものだったが、体には酸素濃度を測定し、その状態をナースステーションで常時監視できる機器が取り付けられるのと同時に、ナースステーションの目の前の部屋に移動させられた。

 数か月前、その部屋に移された高齢の男性が亡くなったのを見ていた、ナースステーションにより近い部屋に移るという意味がなんとなく分かったような気がしていたが、いざ自分の母親がその部屋に移るとなると複雑という言葉でも言い表すことが出来なかった。

 まだわずかに母の意識があるうちにと君枝が実の両親に見舞いに来るように話をしたらしく君枝の両親が見舞いに来てくれた、母の様子を見て、鼻に管を入れるタイプの酸素吸入ならまだ大丈夫だと君枝の母親から聞かされたと話してくれた、君枝の母親は自身の姉の看病をしていたときの経験から酸素マスクのことだけでなく、便の色や呼吸の感じなど、いろいろと話してくれたらしく、私にもいろいろと教えてくれた。

 その話を聞いて少し安堵したのだが、それでも医師から受けた余命宣告、年を越せないかもしれないという言葉が頭から離れることはなかった。

 そして月半ばを過ぎるともはや母の意識はほとんどなくなった、医師の話では意識が無いわけではないと言っていたが、近くで私や君枝が話していても全く反応しなくなった、そのかわりと言ってはなんだが痛みを感じることがないのか顔をしかめることもなく、私にはそれだけが救いだった。

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