十五.
それから半月ほど経つと母はとうとう腰の強い痛みを訴えるようになった。
前もって師長には頼んでおいたのでいよいよ麻薬のパッチを使うことになり、その週末に病院に行くと、偶然ナースステーションにいた担当医に呼び止められた。
「今はまだ意識もあります、注射と違うのですぐに効果が出るわけではありませんが、それでも確実に痛みを抑える代わりに、徐々に意識が無くなるというか、こちらの呼びかけにも反応しなくなります」
「完全に意識がなくなってしまうということですか?」
「そういうことではありません、本人にとっては反応することがうまくいかなくなるというか、面倒になるというのが正しいのでしょうか」
「そうですか、でも痛みを感じなくなるのであれば、それで良いです」
「それから・・・動けなくなった場合には、腹部の水を抜くための管を付けたままにしますし、オムツを使用します」
「わかりました、用意して病室に置いておくようにします」
傍らにいた師長はその言葉に頷くと、メモを取っていた。
麻薬のパッチを使い始めた頃はまだ会話も普通にすることが出来たし、足が痛い、腰が痛いという度に摩ってやれば、気持ち良さそうな顔を見せたが、徐々に食事も喉を通らなくなり、というか食欲がないと言うため点滴に代わると、以前は少しぽっちゃりしていた母だったが、その太腿は私の腕よりも細くなり、ふくらはぎは今にも折れそうなほど骨と皮だけになっていき、頻繁に様子を見に行ってくれている君枝に日々の様子を聞いていても、週末に見舞いに行って自分の目で見ると聞かされている以上に変わっていた。




