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一.

 もう10年以上も前の話、あの時、私がしたことは自分のためだったのだろうか。


 9月も終わりに差し掛かったあの日、仕事中に妻の君枝から携帯電話に電話がかかってきた、仕事中はいつもメールを送ってきて時間のある時に折り返し電話が欲しいと言ってくるのに、わざわざ電話をかけてきたということは余程急ぎの用事か何か特別な事情があると思い、通話ボタンを押して少し待ってと言うと慌てて事務所を出て少し離れた喫煙所へ向かった。

「もしもし、どうした?何かあった?」

「突然だけど、お義母さんが入院することになったの、朝9時過ぎくらいにお義母さんから電話がきて、病院に付き添って欲しい言うから、急いで実家に行って一緒に病院に来たの」

「そうか、ありがとう、わざわざすまないな、検査入院ってこと?」

「まだ詳しいことはわからないんだけど、先生からもう少し詳しく検査したいって言われて」

「そうか、わかった、申し訳ないけど今日は病院には行けそうにないから、家に帰ったら詳しく教えて、ところで何ていう病院?」

 そう言って病院の名前を聞いて電話を切った、大したことが無ければよいと思いながらタバコを吸って席に戻ると、なんとも言えない胸騒ぎを感じた。

 その夜、家に帰って食事をしながら君枝に話を聞いた、母は以前交通事故で大腿骨を骨折したことがあり、その後遺症なのか腰や足が痛いとよく言っていたのだが、ここ数日はいつも以上に腰に強い痛みを感じたため、近所に住む昔から仲の良い茶飲み友達に話をしたところ、そんなに痛いのなら一度病院できちんと検査してもらった方が良いと勧められたが、父に付き添ってもらうのは不安だし、遠くに住んでいる兄夫婦に話してもいつになるかわからないと思って君枝に電話をしてきたらしい、実際に母が入院することになって母が兄に電話したらしいが兄嫁は仕事を急に休めないし、子供(孫)たちのことを理由にして行けないと言い、それでも気になったのか夕方になって兄だけは病院に来たらしい。

 病院ではまず腰の痛みと聞いてレントゲンやCTを撮ったらしいが、もう少し詳しく検査したいと言われて待たされると、整形外科ではなく内科に行くように外来担当の看護師に案内されて内科の診察室に君枝と共に入ると、担当となった医師にもう少し詳しく検査をしたいので入院をしてはどうかと勧められ、母もまるで家に帰りたくと言わんばかりに先生がそういうなら暫く入院すると言い出したらしい。

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