蔑みの熱
この集にはちょっと残酷な表現が含まれていますので苦手な方は読む事をおすすめしません。
でも私の実体験です。
ただ読む方もそうでない方もタイトルの「蔑みの熱」にあやからない事を願います。
私は人の気持ちを知らない人が嫌いです。
平然と天使のような笑顔で近づき、気を許したところで、私の虚をつき、自殺に追い込もうとした人間。
私の周りにはそんな人間がたくさん潜んでいた。
誰にも打ち明けられない私の事を知って、弱った私を誰も、何も証拠も残らない所に連れて行き、私を追いつめたあいつ。
私はあいつの気持ちは分かる。
人を欺くことによって得られる熱。
私はそれを蔑みの熱と呼んでいる。
私も以前その力にあやかった事があった。
自分よりも弱い立場の人間を欺き、そして自己の熱にする。
今思えば卑劣で悪質だが、そうせざるを得ない状況だった。
だが、それにあやかり私は罰を受けた。
それは欺いた本人に見抜かれて、殺意を抱くほどの恨みを買い、私は逃げて、何とかしのいだ。
そしてまた新たな自分よりも弱い人間を熱にしようと試みたが、気が付けば一人になっていた。
誰も私のことを相手にしてくれる人間はいなかった。
さらに最悪な事に自分さえも信じられなくなり、疑心暗鬼にとらわれて、しどろもどろとなった。
蔑みの熱にあやかる者の結末は、誰もいなくなり自分さえも信じられなくなる、罰だ。
そして誰かにその刃を向けられる。
その者はお化けじゃない。呪いではない。悪魔かと言えば悪魔だが、その悪魔は鏡の前に映ったその人物。
まるで鏡の前に立った時に、その者がハサミで私の頸動脈を切り裂いた。
そう鏡に立つ者、それは分かるだろうけれども、自分。
蔑みの熱にあやかり、誰も、そして自分さえも信じられなくなり、疑心暗鬼に陥り、そして自分に殺される。
私は殺されかけた。
自分に自分の頸動脈をハサミで切断しようとした。
だが鈍いハサミでは頸動脈は切ることは出来ず、何度か頸動脈を切りつけたが、頸動脈切断には至らなかったが血塗れになった。
私にはもう居場所なんてない。
そんな追いつめられた現状に、大切な人の姿が見えてきた。
私の防衛本能が働いたのかも知れない。
その人はいくら私が欺いても、近くで穏やかに接してくれる人。
その人の為に生きたいと思った。
そして血塗れになりながら夜中部屋を出て、兄の部屋へ助けを呼んで、救急車で運ばれ、精神病院に搬送された。
私は全身を拘束されながらも、大切な人のために生きたいと願った。
そしてもう二度と蔑みの熱にあやかったりはしないと。




