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柴田盟の気まぐれポエム集  作者: 柴田盟
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ドラマ


 嫌らしい笑みを浮かべながら、私に暴力をふるい、さらにロッカーに閉じこめて、外側から金属バットで思い切り叩きつける。


 体も心も壊れそうになった。


 誰か助けて。


 音が治まった時、誰もいなかった。


 もう私には心休まる場所なんてない。


 教室に戻れば、机には彫刻刀でバカと言う文字が刻まれ、もう気にする事はなかった。


 これが私なのだから。私が出来損ないだから。私が勉強が出来ないから。


 私は泣くことすら忘れていた。


 泣いて帰れば、親に怒られて、兄に詰られるだけ。


 でももう泣かない、いや泣けない、もう仕方がない事なのだから。


 私に優しくしてくれたのはおばあちゃんだけだった。


 私におやつをくれたり、おこずかいもくれた。


 だから家に帰ると、おばあちゃんの部屋に行き、ドラマに夢中になっているおばあちゃんと一緒に再放送のドラマをよく見た。


『あすなろ白書』『人間失格』『ひとつ屋根の下で』『振り返れば奴がいる』『デパート物語』etc。


 おばあちゃんと見たドラマはどれも心にしっくりと来る物だった。


 私はおばあちゃんと一緒に見るドラマのために生きてこれたのかもしれない。


 思えば、そのドラマの続きが楽しみで、地獄のような学校が終われと心の中で数え切れない程、唱えていたよね。


 その子供の頃に見たドラマは現代になっても色あせない。


 大人になってからでもDVDでレンタルされ、あの感動をもう一度味わうために、今も見る時がある。


 そして老衰で他界したおばあちゃんを思い出す。


 子供の頃何となく楽しく見ていたドラマだが、その本当の面白さが要点が何となく分かってきた気がする。


 その脚本家が言いたいのは、要点だけを一言で言ってしまえば『慈悲』の心かも知れない。


 私をいじめた連中はそんな気持ちも微塵もない残虐無慈悲な人間ばかりだった。


「本当にドラマっていいね!おばあちゃん」


 と私は人知れず呟き、DVDをセットしてテレビの画面の前であの感動をもう一度味わうために、おばあちゃんを思いだし見るのである。


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