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第四部 紙を作るのは大変だ

 風呂上りでサッパリした佐久良さくらは自室で明日以降の予定を考えていた。


 今の佐久良達は一か月位の周期で博多中心の商売と遠征を繰り返している。なぜその周期になるかと言えば、主力商品である竹和紙たけわしが関わってくる。


 皆さんは竹和紙の作り方を知っているだろうか?竹和紙は読んで字のごとく、竹の繊維からできている和紙だ。基本的には普通の和紙と同じようにドロドロの繊維をいて、乾かすことで紙となる。


 紙漉かみすきの体験をしたことがある人は分かると思うが、くという動作は難しい。しかし、それに関しては専門の職人を育てることである程度は解決する。現在は紙を漉く職人を十人雇っている。一人一日百枚程作ることが出来るため、それだけ人がいれば商売に困ることは無い。


 作ること以上に大変なことは原料の確保だ。原料は勿論竹なんだ。この頃、現代で見るような竹林は日本にはほとんど存在していなかった。日本でよく見る太くて背の高い真竹まだけ孟宗竹もうそうちくは中国が原産だといわれる。それらは日本にもあるにはあるが貴族が育てたりする高価な植物だったと言われる。


 あって当たり前と思っていた竹が中々見つからず、細く小さい笹ばかりしか見つからなかった。当時の佐久良は困り果てていた。自分で探すのは限界があると気づき、村の大人たちに相談をしてみたところ、漁師のおじさんが心当たりがあるというのだ。


 そこでおじさんに言われた通り、漁場の近くに行くと小振こぶりではではあったが竹があったのだ。細く、高さも人の三倍程度の高さでしかなかったが、しっかりと硬い竹だった。


 なんとか見つかったその竹は水辺に多く生えるため、今の拠点の近くに幾つかの群生地は見つけてあるが、細い分本数を確保しなければならない。さらに竹をドロドロのペースト状にするために川の水に一か月程さらし、さらした竹を叩き続けなければならない。


 これがまた、重労働だ。これまで職人にさせては生産効率が落ちると考え、その仕事は職人以外で分担して行っている。結果、一か月ごとに拠点に帰っては遠征を繰り返しているのが現状だ。そもそも、売る以外に自分たちで使う量が多いため、皆が納得して作業に参加しているが、全てにおいて効率が悪いことはいがめない。


 考えた結果、家の近くに水路を引き、水車小屋を建てることにした。


 水車小屋があれば竹を叩くという単純作業を日夜させることが出来る。水路を引けば川まで竹を水にさらしに行かなくて済むし、水車小屋も拠点の中に作れる。そうなれば和紙のための労働力を減らせるし、生産量も増えるだろう。


 この案で問題があるとすれば水車の作り方が分からないことだ。そのためこの計画の責任者に安鹿あかを任命し全て任せることにした。もちろん佐久良が分かる限りのことは教えてある程度の構想は練れたらしいので、遠征の間にある程度形にしておくとの事だったから、ひとまずそれ関連の報告書を見ることにした。


 報告書を見る限り、水路は引けたらしい。運のいいことに近くの森の中に水源があり、それをみんなで引いてきたようだ。今はそこに竹をさらしているとのことだ。


 水車のほうも順調に進んでるようで、何種類か作りどれがよく回るかを実験している。しかし、回転運動を叩くという上下運動に変換することには戸惑っているようで完成の目途めどはたっていない。


 佐久良としても全くの専門外だから仕方ないと諦め、時間をかけて取り組むことに決めた。


 他の書類にも目を通したが、別段べつだん新しいこともなかったので省略する。


 明日からは勿論和紙の材料集めをすることになるが、他にはどうするべきか腕を組み佐久良は悩んでいた。


 そこで思い出したのは新羅しらぎの商人がそろそろ来るので、準備をしなければいけないということだ。お礼のためにここに来るとはいえ、客人なのでそれ相応のもてなしをしなければならない。もてなしが上手くいけば今後は商売相手としての付き合いが続くかもしれないのだから気合を入れなければならない。


 ここまで考えた佐久良は疲れもまってるため寝ることにした。この話は重要なことだから一人で考えても仕方がないと考えた。正直なところで言えば、ただただ眠いだけである。

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